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ぶれない自信、整える。 サッカー選手・長谷部誠さん

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【NIKKEI The STYLE 2019年12月22日付「My Story」を再掲】

サッカー日本代表では「ボランチ」と呼ばれる扇の要、所属クラブでは複数のポジションをこなす万能選手として第一線で活躍してきた長谷部誠さん。たぐいまれな精神力でぶれない存在であり続けた名手にも「どん底」と呼べる日々があった。

11月23日、晩秋の午後。長谷部さんは本拠地フランクフルトのピッチに立っていた。スイス、セルビア、オランダ、ポルトガルの選手らで編まれた多国籍軍のゲームキャプテンとして。

「チーム全体なら20カ国くらいの選手がいる。共通語はドイツ語か英語。面白いといえば面白い。いろんな文化の違いがあって。試合前に急にお祈りの儀式にいく選手が何人かいたり。体を洗う時に、ごしごしタオルを使うのは日本人とフランス人とかね」

ブンデスリーガに在籍し13シーズン目、3つのクラブを渡り歩きながらリーガでの出場試合数は300に届いた。「こっちの人は僕をもうドイツ人と思っているみたいで。日本人のアイデンティティーとドイツに対するアイデンティティーのようなものが面白いバランスで在ると自分でも感じます」

異郷の地で闘い、もまれ、なじみ、しっかり地歩を固めた人間だけが持つたたずまい。差異を楽しむ余裕と自信が言葉の端々ににじみ出る。

監督から冷遇され 孤独に耐えた日々

そんな長谷部さんが「一番つらかった」と語る時期は、12年シーズンの冒頭だ。浦和から移籍したボルフスブルクで5シーズンを過ごした後、英国のプレミアリーグへ渡ろうとした。オフの間のその試みが頓挫し、チーム残留を決めると、扱いが一変した。

当時の監督は鬼のフェリックス・マガト。選手に猛練習を課すことで有名で、クラブに初のリーグ優勝をもたらした功労者でもあった。ゼネラルマネジャー(GM)を兼任していたから、選手を生かすも殺すも思いのまま。

「一度でもチームから出て行こうとした者は戦力と見なさないということだったと思う。監督に反旗を翻すと、こういうことになるよと」。毎日練習に行ってもコーチから時計と全地球測位システム(GPS)付きの装具を渡され、森の中をひたすら走るだけ。ボールにも触れない。開幕から8試合連続でベンチ外が続く。監督は口をきいてくれず、そんな監督の目を気にして、チームメートも話しかけてこなくなった。

孤独の罰走に明け暮れた間、チームは開幕から1勝2分け5敗で最下位に低迷。皮肉なことに、見せしめに終止符を打ったのはマガト監督の解任だった。後任監督は就任初戦で、それまで蚊帳の外だった者にチャンスを与えた。結果は4-1の快勝。長谷部さんも1アシストし、主力に返り咲いた。

3カ月近く、干され続け、復帰戦で満点の答案が書けたのは「自分の中にあるものを総動員したというか。試合に出てないと自信が持てなくて一つのミスが尾を引く。逆に僕は、自分を使えば絶対に勝てるよという自信を無理にでもずっと持つようにしていた」。奪われていたサッカーをする喜びが不安を上回った90分間でもあった。

実はマガト監督も解き放ちの機会をうかがっていたらしい。更迭される前日か前々日のこと。練習後クラブハウスのサウナに長谷部さんが入ると、湯気の向こうに監督がいた。体が固まる。沈黙。向こうが先に口を開いた。

「準備はできているか」

「俺はいつでもできてます」

答えを聞いた監督が浮かべた不敵な笑み。今も脳裏に焼き付いている。

飼い殺しの状況を招いたのはある意味、自分がまいた種。だからマガト監督に対して負の感情はないという。

「そもそも移籍という形で僕をドイツに連れてきてくれた恩人。その時は確かにきつかったけど、乗り越えた時に大きなものが残ったというか。僕を遠巻きにする人間がいる一方、食事に誘って励ましてくれる選手もいた。人としても、いろんなことを学べた」

そんな恩師と今年、解任以来の再会を偶然果たした。「まだやってるのか」という憎まれ口の後で「もう5年はやれるぞ」と励まされたという。

確かに、来年1月で36歳になるが、プレーはワインのように熟成中だ。昨季はベスト4まで進んだヨーロッパリーグの優秀選手に選ばれた。

情熱は絶やさず 自分の位置定め

本人も、年齢は「一つの印象を与える数字にすぎない。年齢より、乗り越えて、踏ん張ってきたことに価値を見いだして」と訴える。ブンデスは国籍に関する制限が無いに等しい自由競争のリーグ。毎年、次から次に世界中から若い選手が襲ってくる。

「年をとると許容範囲が広がり、いろんな価値観を受け入れようとする。でも、それだけだと落ち着いていって自分の良さを失うかなと。ピッチの上でも普段の生活でも熱くなるところは熱くなる。若い有望株が出てきても『そろそろ譲り時か』なんて絶対に思わない。そういうパッションは持っていたい」。だから好きなドイツ語は「ライデンシャフト(情熱)」だ。

これまでのキャリアからして、将来の日本サッカーを背負って立つ人材と期待されている。「欧州のトップチームで監督になれるとしたら、それは長谷部」と話す関係者は多い。本人は「引退後のことは正直、今はふわっとしている。堂々巡りというか」。

「指導者業は一つのオプションとしてあるが、すごいストレスにさらされる監督たちを見ていると、これが本当に自分がやりたい職業なのかと」

「でも、自分がやりたいことだけをやって、はたして満足するだろうかとも感じる。周りが期待すること、僕が積み上げてきたものの中で僕にしかできないこと、そういうものにやりがいを感じるかもしれないなと」

フランクフルトでの最新の役回りは「リベロ」。最終ラインからチームとゲームを動かす重職である。やりたいことと、やるべきことを見極めながら、全体を俯瞰(ふかん)し、自分の置き所を定める。イタリア語で「自由」を意味するそんなリベロのあり方と、自身の現在地が、どこか重なって見える。

【My Charge】世界での社会貢献 活動通じ思索深める
 2011年に出した啓発本『心を整える。』は100万部を優に超えるベストセラーになり、印税は東日本大震災の支援等に充てた。07年から国連児童基金(ユニセフ)の寄付活動に参加し、16年には日本ユニセフ協会の大使に就任。社会貢献活動に熱心なことで知られる。
 「小学生のころから日本はいろんな面で恵まれていると耳に入ってきて、自分だけ良ければいいのかという思いがずっとあり。それを今、形にしている感じですかね。サッカーのプロ選手になり、日本代表になった自分の行動を通して、紛争や移民とか、日本にいると感じにくいことに1人でも多くの人が目を向けてくれたらなと」
 大使として初の海外活動はエチオピアで、予防接種の広がりを視察した(写真上)。ギリシャなどの難民キャンプにも足を運び、同じ地球上で「こんな場所があるのか」「こんな境遇の人がいるのか」とショックを受けた。
 「社会貢献に答えはないと正直思っていて。ただの自己満足かもしれないし、自分が良かれと思って行動しても相手はどう受け止めるか分からない。夢や希望を持てと簡単に言うけれど、今日のことで精いっぱいの子供たちを見れば、自分の言葉にむなしさを覚えたり。もっと影響力を持たなければと思うこともあれば、そういう自分におごりや謙虚さが欠ける気がすることもある」。いろんな想念が駆け巡る。
 「でも、実際に厳しい環境で暮らす子供たちを目の当たりにすると、自分の感情なんか気にしている場合じゃないと痛感する。考え過ぎたら何もできなくなる。邪念は脇に置いとけと」。社会貢献活動は回り回って「自分が影響を受けていることの方が多い」。
 旅することが好きだ。今年9月にはスペインのマヨルカ島を訪ねた(写真下)。浦和レッズにいたころも温泉へのひとり旅をよくした。今は妻と幼い娘の3人旅が基本。昨夏に日本代表から引退し、オフの期間が増えたのも追い風になっている。
 「フランクフルトは交通の便がいいので、代表ウィークの時にいろんな国に行ける。子供もいるので行ける場所は限られてくるけど、家族で楽しさを共有できるのがいいですね」。最近訪ねた国ではエストニアに好印象を持った。「遊び場が多くて子育てに向いているところだなと」。その瞬間、父親の顔になっていた。

武智幸徳

井上昭義撮影

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