独社5社買収 「永守流」一気の攻め
宮東治彦・日経産業新聞編集長に聞く
ニュースを詳しく解説する「フカヨミ」コーナー。日本電産がドイツのロボットなどの部品メーカー5社の買収を決めた戦略について、日経産業新聞の宮東治彦編集長に聞きました。
日本電産は2018年度末までに、産業ロボット部品や工作機械などを手がけるドイツ企業5社を買収する。買収総額は約500億円となる見通し。製造業のデジタル化を促す第4次産業革命(インダストリー4.0)で先行する独企業の技術を一気に取り込み、工場の世界的な自動化需要を狙う。
宮東編集長の解説要旨は以下の通りです。
減速機向けモーターを主力事業に
「日本電産が買収した企業は60社を超えますが、今回の買収の狙いは少し違います。世界最大手となったHDD(ハード・ディスク・ドライブ)用のモーターに続き、最近は自動車や家電分野に力を入れてきました。今回はロボット。要となる部品、減速機の技術を狙った買収です。産業用ロボットにはアームの関節にあたる部分に必ず減速機が使われています。人手不足と自動化の流れを背景に、需要は年率1割のペースで増えています。減速機が足りずにロボット生産に支障が出るほどで、日本電産はこの成長市場を一気に攻める戦略です。日本電産はHDD向けで一気に成長した企業。永守重信会長は今回『HDDの時と同じにおいがする』と話しており、2000億円を投じて世界シェアを現在の1割から5割以上に高めたいとしています」
製造業革新巡る覇権争い激しく
「デジタル化による製造業革新は世界が狙う有望分野。『インダストリー4.0』を掲げるドイツや、『中国製造2025』を掲げる中国などの覇権争いが激しくなっています。日本電産が買収を決めた5社などは、中国企業も狙っています。まさに草刈り場で、今買わないと負けてしまう、という危機感があるのでしょう。インダストリー4.0は日本も強化したい分野です。日立製作所などを中心に官民で強化する取り組みはありますが、投資や技術の標準化では、海外からやや後れを取っています。日本電産のような思い切った攻めの戦略が、ますます必要になるでしょう」
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