コナモンや伝統工芸…関西文化担う学生育て 大学・学部相次ぐ
関西で地域文化の担い手となる人材育成のための大学や学部の新設が相次いでいる。梅花女子大学(大阪府茨木市)は4月に国内で初めて卒業時に調理師の資格が取得できる4年制学部を新設する。京都美術工芸大学(京都府南丹市)は4月に国内で初めて伝統工芸に関する大学として開学する。大学生の就職内定率が低迷するなか、技術や資格を取得できる大学の人気は高まっており、今後もこうした大学・学部の新設が増えそうだ。
梅花女子大学が4月に新設する「食文化学部」は4年間で調理実技、食文化、食品衛生を中心に学ぶ。「大阪の食と文化」や「コナモン文化論」など大阪府にちなんだ講義を開講。「ソムリエ入門」ではリーガロイヤルホテルのマスターソムリエの岡昌治氏を講師に招くなど、関西の外食企業やホテルとも連携する。定員は80人だが、志願者数が181人に達するなど人気が高いという。
これまでの調理師養成は専門学校などによる1~2年のカリキュラムが主流で、講義の大半が資格取得に関わるものだった。4年間で外食の魅力を伝えるのに欠かせない食文化や食品衛生にまつわる知識を教え、関西の外食企業やホテルへの就職、将来の飲食店の開業につなげてもらう。外食産業の人材不足解消にも役立つとみられる。
京都美術工芸大学は4年制の伝統工芸学科に陶芸、木工、漆芸、彫刻の実習分野を設ける。修理の技術まで教えるのは初めてという。伝統工芸のメッカである京都の専門家と協力し、地域の文化を守る専門家を育てる。
基礎知識や基礎技術を学ぶだけでなく、3年目からは地域と連携し、インターンシップで文化財の修復作業などに携わる計画だ。教員は非常勤を合わせて約80人。地元で伝統工芸に従事する専門家などが担当する。1年目の定員は95人だが、初年度は定員割れする見込み。問い合わせは多く編入が期待できるという。
京都府は南丹市に工業団地を整備するなどで、ものづくりの拠点にしようとしており、その一環で大学も誘致していたとみられる。
一方、成長産業に人材を送り込む学部は相変わらず人気が高い。摂南大学(大阪府寝屋川市)は看護学部を4月に新設する。場所は枚方市にある枚方キャンパスで定員は100人。地域の医療と連携し、実践能力の高い看護職を育成するのが狙い。京都橘大学は理学療法学科と心理学科を持つ健康科学部を新設するなどの動きが目立つ。
日本私立学校振興・共済事業団が調べた全国の2011年度の私立大学の入学者数の合計は前年度比1%減の48万人。大学進学率の上昇で入学者は着実に増えてきたが、ここ数年は少子化で頭打ちの傾向が鮮明だ。それでも「医療や保育など国家資格がとれる学部の人気が高い」と大学通信(東京・千代田)の安田賢治常務は指摘する。
食文化や伝統工芸は歴史的背景や広がりのある関西の土壌だからこそ成り立つ面もある。景気の低迷により関西の高校生が大学を選ぶ際に地元志向が高まったことで、関西の地域文化や伝統産業を色濃く反映した大学や学部を求める傾向は強くなっているようだ。