「絞首刑は合憲」パチンコ店放火で死刑判決
大阪地裁
5人が死亡した2009年の大阪市此花区のパチンコ店放火事件で、殺人罪などに問われた無職、高見素直被告(43)の裁判員裁判の判決公判が31日、大阪地裁であった。和田真裁判長は被告の完全責任能力を認め、争点となった絞首刑の憲法上の是非では「合憲」と判断。その上で「多数の死傷者を出したまれにみる悲惨な無差別殺人だ」として求刑通り死刑を言い渡した。
弁護側は控訴する方針。裁判員裁判の死刑判決は10例目。
起訴内容に争いはなく、争点は「事件当時の被告の責任能力の程度」と「絞首刑の合憲性」。絞首刑の憲法判断については、1955年に最高裁大法廷判決が合憲判断を示していた。
判決理由で和田裁判長は、絞首刑が憲法の禁じる「残虐な刑罰」に当たるか否か、裁判員の意見も聞いて検討。「死刑はそもそも受刑者の意に反して生命を奪って罪を償わせる制度。精神的・肉体的苦痛を与え、ある程度のむごたらしさを伴うことはやむを得ない」と指摘した。
さらに「むごたらしいか否かの評価は歴史や宗教的背景、価値観の違いなどで異なる。どの方法を選択するかは立法裁量の問題だ」と判断。「絞首刑が最善かは議論があるが、残虐な刑罰に当たるとはいえない」とし、「不必要な苦痛を与え首が切れる恐れもあり、残虐な刑罰にあたる」との弁護側主張を退けた。
責任能力については、「死刑に値する重大な犯罪と十分分かった上での犯行で、被告が主体的に判断し行動できたことは明らか」と完全責任能力を認定。「妄想の影響で善悪を判断する能力などが著しく損なわれていた」と刑の減軽を求めた弁護側主張を退けた。
その上で「生活に行き詰まった恨みを晴らすという身勝手な動機で犯行に及んでおり、生命をもって罪を償わせるしかない」と結論付けた。
判決によると、高見被告は09年7月5日、パチンコ店でバケツに入れたガソリンをまき、マッチで放火。同店を全焼させ、客や店員ら5人を死亡させ、10人にやけどなどのケガをさせた。