サッチャー元英首相死去 「鉄の女」小さな政府推進
87歳
【ロンドン=上杉素直】「鉄の女」と呼ばれ1979年から11年間、英国の首相を務めたマーガレット・サッチャー氏が8日、脳卒中のため死去した。87歳。強い指導力で国営企業の民営化や規制緩和を進め、英国経済を復活に導いた。「小さな政府」の下で経済の自由化を実現する政策はサッチャリズムと評され、他の先進国の経済改革に大きな影響を与えた。
25年、英イングランド中部に生まれた。オックスフォード大卒業後、59年に下院議員として初当選。75年に保守党党首に選ばれ、79年の総選挙に勝って英史上初の女性首相に就任した。頻発していたストライキを規制し、肥大化した財政支出を大幅に削減した。
民営化を通じた競争原理の導入で活力を引き出したほか、ビッグバン(金融市場大改革)など市場に多くを委ねる大胆な改革を打ち出した。周囲の反対にあっても信念を貫き、長期低迷で「英国病」と皮肉られていた経済をよみがえらせた。
82年のアルゼンチンとのフォークランド紛争では軍艦を派遣するなど力による外交を展開。米国のレーガン大統領(当時)とは同じ保守主義者として「特別な関係」を築き、反共産主義を鮮明にした。英米の連携が旧ソ連との東西冷戦の終結に道を開いた。
国民に不人気だった「人頭税」の導入がきっかけで党内の強い反発を招き90年に辞任した。51年に結婚した夫デニス氏との間に双子の子供がいる。95年7月に日本経済新聞に「私の履歴書」を連載した。