内外投信に毎月10万円、20代投資家の「計画」
続・個人投資家奮戦記(5)
石川県に住む大空翼さん(仮名、25)は毎月、外貨投信と日本株投信を均等な割合で積み立てている投資家だ。日本株50%、先進国株25%、新興国株25%の比率で保有している。積み立てる投信を変えることはあっても、基本的にこの比率を一種のルールにして保っている。「相場が荒れても基本的に現状維持です。地域を分散しておけば、中長期では高めのリターンを稼げるからです」(大空さん)。2012年に入ってからの「戦績」は、運用資産が年初の11%増(8月末時点)とまずまずだ。
北村慶氏が書いた『大人の投資入門』(PHP研究所)を読んでインデックス投資に興味を持ち、2008年秋のリーマン・ショック後に現在の「ルール」に基づく投資を本格的に始めた。平日の日中は仕事で忙しく、相場は見ない。夜間に米国雇用統計など主要指標をチェックし、休日に投資先の運用状況を確認するぐらいだという。時間がない中でも、状況の確認は投資家として最低限必要なことと考えているからだ。このあたりは短期売買による利益獲得を狙った投資家とは一線を画している。
投信の積み立ては多くの専門家が勧める手法の1つだ。個人の投資に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦さんは「個別の銘柄だと、リスク分散のために多くの投資額が必要になる。(個人が手軽に始めようというときは)投信で積み立てるのが望ましい」と助言する。加えて毎月などの単位で一定額を投資する形なら、時間ごとの価格変動リスクを軽減できる。
大空さんは投資関連の仲間との交流にも熱心だ。定期的に開かれている「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ in金沢」という会合に参加。ひふみ投信を運用するレオス・キャピタルワークス取締役の藤野英人氏も参加したことがある会合で、同氏はこの会合を通じて長期投資に関心のある北陸の投資家と親睦を深めたという。
ふだんの生活の中で、長期投資について誰かと話し合えるという機会はほとんどないのが一般的だろう。長期投資について興味のある人が一堂に会した場では、銘柄や戦略などについて濃厚な意見交換ができ、大いに刺激になるという。
20代の大空さんは将来の年金について不安を感じている。いずれ家族ができれば出費もかさみ、定期的に多くの額を積み立てるのが難しくなるかもしれない。「今のうちに資産をため、のちに高い利回りで資産を増やせるようにしておきたい」。
「最近の為替相場は円高方向に振れすぎていて、中長期的に円安に向かえば為替差益も確保できると思っています」。大空さんのコツコツ・分散投資は始まったばかりだ。
(日経マネー 南毅)