『ONE PIECE』から『けいおん!』まで――「仲間マンガ」最新事情
日経エンタテインメント!
現在、「新世界編」で冒険を始めている『ONE PIECE』の麦わらの一味たち。激闘の「白ひげ海賊団」編から2年後、別々の道で修業し、成長したルフィたちの姿を見て「離れていてもつながっている」仲間たちの固いきずなを再確認し、あこがれを強くした人も多かっただろう。
マンガでの「仲間」は普遍的なテーマだが、大きく2種類に分かれる(下図参照)。「戦うための仲間(戦闘型)」と「戦わない仲間(非戦闘型)」だ。「戦闘型」は、さらに分類できる。1つめは、現在『週刊少年ジャンプ』などで最もポピュラーで、『ONE PIECE』に代表される「王道バトル型」。次に、生き残るためにやむを得ず戦う「極限サバイバル型」。3つめは、スポーツやゲームをともに戦う「体育会系熱血型」だ。
「戦闘型」の仲間を描いた作品は,動機に違いはあれど、厳しい状況をともにくぐっていくだけに、仲間たちの間にガッチリとした強固な結びつきがある。信頼と共同作戦で勝利をつかみ取る『ONE PIECE』や『BLEACH』。サバイバルマンガ『エデンの檻』『自殺鳥』などでは、みんなで知恵を出し合って生存の道を探る。そして、チームワークで勝利を目指す『おおきく振りかぶって』『ちはやふる』。3タイプとも、ベタベタに依存し合うのではなく、互いに鍛錬しながら前に進んでいく「強さ」を教えてくれる。
「とりあえず集合」の新形態も
これに対して最近目立つのが、「非戦闘型」の仲間を描いた作品だ。その典型が『けいおん!』や『涼宮ハルヒの憂鬱』といった文化系学園モノ。「戦闘型」の「強さ」に対して、こちらは「一緒にいることの心地良さ」が際立つ。
「非戦闘型」作品に共通しているのは、登場人物たちに明確な目的がないこと。気の合う仲間が一室に集まり、なんでもない日常をただぼんやり(でも仲良く)過ごす。そのユル~い集合や連帯を、眺めて楽しむわけだ。
激しい展開に慣れている人は、「そんなの面白いの?」と思うかもしれない。しかしこれがウケている。軽音楽部の少女たちの日常生活を描いた『けいおん!』は、アニメ化で人気爆発。4巻累計発行200万部を突破し、4コママンガとしては異例の大ヒットとなった。
かわいいキャラたちをひとところに集めて、その会話やしぐさをめでる面白みは、小動物を飼う行為と似ている。大きな事件はないが、見ているだけで心が和む。そんなまったりした仲間感覚が、いやしを求める現代のマンガファンの心をつかんでいるようだ。
(ライター 芝田隆広)
[日経エンタテインメント!2010年12月号の記事を基に再構成]
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