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保利茂に師事、田中内閣実現に奔走

「政界のドン」金丸信(3)

政客列伝 特別編集委員・安藤俊裕

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新人議員時代に金丸信は同期当選で10歳年下の竹下登と懇意になった。当時、佐藤派の新人議員は金丸、竹下と細田義安の3人だけ。金丸と竹下はともに地方の造り酒屋の出身で教師経験があり、青年団活動をしていた、などの共通点があり、ウマがあった。2回目の選挙の直前、選挙資金を渡すからと親分の佐藤栄作の呼び出しを受け、金丸と竹下は車に同乗して佐藤邸に出向いた。持ちきれないといけないからと金丸はボストンバッグ、竹下は唐草模様の風呂敷を持参した。

竹下登と盟友・縁戚関係に

佐藤がくれたのは100万円の一束。これなら背広のポケットにも入る額である。拍子抜けした2人は佐藤邸に居合わせた橋本登美三郎、瀬戸山三男ら佐藤派幹部に「これでは困る」と泣きつくと「もう一度、オヤジに頼んでみろ」と勧められた。2人は再び佐藤の部屋に入り「こんな入れ物を持って来たんです。もう少し何とかなりませんか」とおそるおそる頼み込んだ。佐藤は例の大きな目玉をむいて「そうか、それなら100円札に替えてやろう」とけんもほろろであった。

金丸は昭和36年に悦子夫人と再婚した。媒酌を佐藤栄作に頼んだが、断られたので佐藤派の代貸し格の保利茂に頼んだ。これをきっかけに金丸は保利を「政治の師」と仰ぐようになった。たたきあげの苦労人である保利は、吉田内閣で労相、官房長官を歴任し、独特の風格の持ち主だった。坪川信三、塚原俊郎らが保利を囲むマージャングループに加わり、政治家として薫陶を受けた。昭和43年に金丸の長男と竹下の長女が結婚した際も保利が媒酌をつとめた。この縁談を勧めたのは佐藤栄作の寛子夫人である。

昭和38年、金丸は2回生議員のトップを切って郵政政務次官になった。同年11月の総選挙で3回目の当選を果たしてそのまま郵政政務次官に留任したが、佐藤派の代貸し・保利茂がまさかの落選を喫した。1964年(昭和39年)7月の自民党総裁選で佐藤は池田勇人首相の3選阻止をめざして立候補した。カネが乱れ飛ぶ激戦となり、佐藤は惜しくも敗れた。このとき、金丸と竹下は佐藤派幹部・西村栄一の指示で佐藤のボディーガード役を務め、2人は佐藤邸に日参した。

同年秋、池田首相が病気で退陣し、話し合い調整で佐藤が念願の首相の座に就いた。この池田・佐藤のバトンタッチで大きな役割を果たしたのが田中角栄である。金丸は田中について「わたしは佐藤派に入ったときから田中さんを総理にしようと思っていたが、2人だけでじっくり話したことは案外、少ないんだ。しかし、田中さんに助けてもらったことは何度もある」と述べている。

保利の推薦で国対委員長就任

金丸が所有していた赤坂のビルに一時、田中の後援会組織である越山会の事務所が入っていた。ビルを建てる際に資金が足りないので「オヤジ、助けてくれ」と頼み込み、9階建てのビルの7階フロアを越山会が借り切った。金丸は8、9階を使用していたから、越山会の佐藤昭とも頻繁にマージャンをするなど親密だった。ある日、田中が血相を変えて飛び込んできた。「金丸君、大変だ。このビルに田中彰治がいる」。よく調べてみると田中彰治の愛人が入居していた。「政界のマッチポンプ」といわれた田中彰治は新潟選出のこわもて代議士で、角栄は大の苦手だった。その2人が金丸のビルのエレベーターで運悪く鉢合わせしてしまったのだ。

▼初入閣までの主な歩み
1961年(昭和36年)
悦子夫人と再婚
1963年(昭和38年)
2回生議員のトップを切って郵政政務次官に
1966年(昭和41年)
運輸政務次官に
1967年(昭和42年)
衆議院建設委員会の筆頭理事
1972年(昭和47年)1月
保利幹事長の強い推薦で国会対策委員長に
同年7月
福田支持の佐藤首相、保利幹事長の意に反して田中支持の先頭に立って奮戦
同年12月
第2次田中内閣で建設大臣となり、念願の初入閣

この一件があって越山会は金丸のビルから出て行ったが、そうしたことも含めて田中と金丸は「切っても切れない」深い利害関係があった。金丸は昭和41年7月、運輸政務次官になった。翌42年11月、保利が建設相に就任して政界の最前線に復帰すると金丸は衆議院建設委員会の筆頭理事となり、保利との信頼関係を生かして建設行政に食い込むチャンスをつかんだ。

まれに見る長期政権になった佐藤首相は1971年(昭和46年)7月の内閣改造で金丸の盟友・竹下登を官房長官に抜てきし、自民党幹事長には保利を起用した。すでに佐藤後継をめぐって福田赳夫と田中角栄の激しい攻防が始まっていた。佐藤と保利は福田支持の意向だったが、田中は佐藤派内や参議院で着々と勢力を拡大していた。昭和47年1月、金丸は保利幹事長の強い推薦で国会対策委員長に就任した。田中は腹心の二階堂進を推し、佐藤首相は「金丸君で大丈夫か」と懸念したが、保利は金丸で押し切った。

保利が金丸を起用したのは「金丸君と竹下君のところの婚儀が済んだあと、竹下君が官房長官に抜てきされた。釣り合わぬは不縁というから、金丸君を国対委員長にしたんだ」という配慮があった。金丸は保利の厚誼(こうぎ)に感激し、保利の期待に応えようと野党との信頼関係作りに精魂を傾けた。当時の野党の国対委員長は社会党が楯兼次郎、公明党が大野潔、民社党が池田禎治だった。国対委委員長就任は金丸にとって「政治の表舞台に出る一番の土台」となった。

第2次田中内閣で初入閣

1972年(昭和47年)7月の自民党総裁選で、金丸は福田支持の佐藤首相、保利幹事長の意に反して田中支持の先頭に立って奮戦した。保利には「国会議員になって以来、田中角栄を総理にしたい、そういう願いを込めて選挙区でも訴えてきた。誠に申し訳ないが、わたしは田中をやりますからお許しをいただきたい」と仁義を切った。保利は「キミから先にそれを言われてしまえば、君を説得する方法はない。わかった。田中のために命がけでやれ」と言うだけだった。

金丸は田中陣営の本部があるホテルニューオータニに1カ月間、泊まり込んで多数派工作に奔走した。金丸は三木派幹部の毛利松平と連絡をとり、田中と三木武夫の会談をセットした。総裁選で三木の勝ち目はなかったが、三木は日中国交回復に強い意欲を持っていた。毛利は慶応柔道部出身の猛者で金丸とは学生時代から親しく、親台湾派の急先鋒だった。金丸も親台湾派である。その金丸が毛利を通じて三木派に「田中は日中国交回復をやるから決選投票では田中に協力してほしい」と働きかけた。

三木は毛利を伴って田中と金丸が待つ九段のホテルグランドパレスの一室に入ると、立ったまま「田中君、日中問題はどうする」と切り出した。田中は「まあ、まあ」と口を濁した。三木は「まあまあじゃない。それがはっきりしなければ、わたしはここに座るわけにはいかん」と厳しい口調だった。そこへ金丸が口を挟んだ。

「三木先生、田中がここまで出てきて、あなたをここまでお招きしたのは、あなたの言うことも聞くし、日中国交回復もやる。こんな、あなたの考えを聞かないで選挙になりますか。さっ、三木先生、座ってください。もし、田中がそれでも駄目だと言うときには、わたしも覚悟します。田中派を出て三木派に入ります。これだけの約束をしますが、どうですか」。金丸の言葉を聞いて三木はようやく腰を下ろした。こうして田中・三木の提携が実現した。

7月5日の自民党総裁選で田中角栄156票、福田赳夫150票、大平正芳101票、三木武夫69票。決選投票で田中が福田を破り、田中政権が実現した。しかし、第1回投票の田中票は金丸らの票読みより、かなり少なく、福田との差はわずか6票だった。田中陣営からカネをもらいながら投票しなかった連中が多数いたことに金丸は愕然(がくぜん)とした。

金丸は田中から「田中内閣ができた暁には、君を建設大臣にする」というお墨付きをもらっていた。しかし、組閣になると「元帥」と呼ばれた田中派のベテラン・木村武雄が「大臣にならないと次の選挙が危ない。どうしても大臣にしてくれ」と激しい運動を展開したため、金丸の初入閣は見送られ、国対委員長に留任した。昭和47年12月の総選挙後の第2次田中内閣で金丸はようやく建設大臣となり、念願の初入閣を果たした。当選6回、58歳だった。=敬称略(続く)

 主な参考文献
 金丸信著「私の履歴書 立ち技寝技」(88年日本経済新聞社)
 金丸信著「人は城・人は石垣・人は堀」(83年エール出版社)
 「人間金丸信の生涯」刊行記念会編著「人間金丸信の生涯」(09年山梨新報社制作)
 竹下登著「証言 保守政権」(91年読売新聞社)

※2枚目の写真は「私の履歴書 立ち技寝技」より

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