熊本の2女性強殺で死刑判決 地裁、自首認めず
熊本県宇土市と熊本市で女性2人を殺害し、現金を奪ったとして、2件の強盗殺人罪などに問われた熊本市の無職、田尻賢一被告(40)の裁判員裁判の判決で、熊本地裁は25日、「非常に執拗で残虐さが際立つ犯行。罪責は誠に重大」として求刑通り死刑を言い渡した。
宇土市の事件を取り調べで自白したことが自首に当たるかが争点だったが、自首成立を認めなかった。裁判員裁判での死刑判決は9例目。
判決理由で鈴木浩美裁判長は「動機は身勝手、短絡的で酌量の余地はない。刃物で何度も刺すなど冷酷で、遺族の厳しい被害感情も当然だ」と指摘した。
田尻被告は今年2月の熊本市の事件後に自首、その後の取り調べで2004年3月の宇土市の事件を自供した。被告側は起訴内容を認め、宇土市の事件について自首が成立すると主張したが、鈴木裁判長は「取調官から余罪の取り調べを受け、ごまかせないと感じて自白しており、自発的に申告したとはいえない」として自首成立を否定した。
熊本市の事件での自首も「過大に評価できない」と述べ、「最初の事件の7年後に同様の手口で犯行に及んでおり、情状は最悪。一切の事情を検討しても、極刑で臨むほかない」と結論付けた。
鈴木裁判長は最後に「被害者の冥福を祈り、遺族に何ができるかをもう一度考えてもらいたい」と被告に話し掛けた。
弁護人は判決後、「控訴するかは本人と相談して決める」と話した。
判決によると、田尻被告は04年3月13日、宇土市の民家に押し入り、中津千鶴子さん(当時49)を殺害して現金約18万円を強奪。今年2月23日には熊本市の民家で右田美子さん(当時65)を殺害、夫の孝治さん(72)に重傷を負わせて現金約10万円を奪うなどした。〔共同〕