「児童の危険回避判断力養成を」 有識者会議が議論
東日本大震災で600人以上の児童生徒が亡くなったことを教訓に、学校での防災教育や安全管理体制のあり方を検討してきた文部科学省の有識者会議(座長、渡辺正樹東京学芸大教授)は7日、提言案を大筋で取りまとめた。児童生徒が自ら危険を回避する能力を育成することや、ボランティア教育の充実、避難マニュアルの再点検などを求めている。
提言案は今後の防災教育の方向性として、災害時に児童生徒が危険を予測し、回避する能力を高める必要性を指摘。理科や保健体育など既存の教科による学習だけでなく、地域に残る震災の教訓や知恵を学ぶことも有用とした。
災害時におけるボランティア活動についても「進んで安全で安心な社会づくりに貢献できるような資質や能力を養うことにつながる」と強調。支援者としての視点に立つ重要な機会としてとらえることができる、としている。
このほか、学校の安全対策として、全ての学校に緊急地震速報の受信設備の設置と地震・津波の避難マニュアル整備を求めた。
学校の防災管理体制や、学校と家庭との関係についても言及。各学校の安全担当教職員に対して国の責任で全国的な研修を行い、一定水準の知識や資質をもった人材を養成することが必要とした。
さらに東日本大震災では、学校が作成した避難マニュアルで定められた避難場所が津波被害に遭ったことから、マニュアルを大学の研究者らとともに再点検していくことを求めた。
また児童生徒を家庭に引き渡した後で被災した例を挙げ、あらかじめ保護者との間で災害の規模や状況に応じて引き渡しの基準や条件を決めておくべきであるとした。
この日の議論で、委員からは提言案に対して「学校教育に『防災』という科目があってもいいのではないか」といった意見や「管理職の防災意識を高めていくことが重要だ」といった指摘がなされた。