JT、4工場閉鎖へ 営業拠点縮小、1600人削減
日本たばこ産業(JT)は30日、国内4工場の閉鎖と営業拠点の縮小、1600人の人員削減からなる国内たばこ事業の再編策を発表した。来春の消費増税で国内市場の縮小加速は必至。一方で積極的なM&A(合併・買収)で成長をけん引してきた海外事業も販売数量は頭打ちだ。国内の収益力維持の重みは増しており、最高益更新を見込む好業績下でもリストラを進める。
30日記者会見した佐伯明副社長は「前期は過去最高益を達成できたが、国内たばこ市場は減少の一途。先送りできない」と強調した。海外たばこ売り上げ増で2014年3月期の連結営業利益は前期比16%増の6160億円と過去最高を計画するなか、国内事業は思い切ったコスト削減を進める。
まず15年3月末でたばこ製造の郡山工場(福島県郡山市)と浜松工場(浜松市)、材料の岡山印刷工場(岡山市)を閉鎖。原料の平塚工場(神奈川県平塚市)も16年3月末に閉める。「東日本原料本部」(福島県須賀川市)の葉タバコ処理工程と、たばこ自動販売機製造・販売の「特機事業部」(兵庫県)を15年3月末に廃止する。
営業部門も15年4月1日付で現在の25支店体制から15支社制に統廃合する。JT本社の従業員数は13年3月末時点で約8900人。退職勧奨や希望退職で約1600人の正社員を減らす。
国内のたばこ市場は健康意識の高まりや販売・喫煙場所の制約などを背景に減少が続く。JTのたばこ販売本数は1996年度の2706億本から12年度は1162億本まで落ち込んだ。
JTは市場縮小に合わせ85年の民営化時50あった工場を現在の9に絞り込むなど合理化を進める半面、成長を海外に託してきた。99年に米RJRナビスコの米国外たばこ事業、2007年には英ガラハーを買収、世界シェアは14.5%に達し3位となった。
海外売上高は13年4~6月期も16%増と好調だが、販売数量に着目すると欧州での景気低迷や世界的な広告・販売規制の強化などが響いて6%減。売り上げ増はロシアやトルコ、スペインなどで実施した値上げによるもので、量的な拡大には陰りがみえる。
世界的に寡占化が進むたばこ市場では、これまでのような大型買収は「(各国の)独占禁止法が壁になり現実味はない」(小泉光臣社長)。近年の買収はスーダンのたばこメーカーや、エジプトの水たばこメーカーなど小粒な案件が目立ち、従来のような海外成長への過度の依存には限界もある。
国内たばこ市場は3~4%程度の減少が続くとみられるが、今なお営業利益は2400億円程度と全体の4割を安定して生み出す。一段の市場縮小に備え、製販両面でコスト削減を進め、国内事業の収益力を維持する。