鈴木、車いすハーフマラソン初V 「リオ」へ急浮上
車いす陸上中長距離の鈴木朋樹(21、城西国際大)が、昨年12月に開かれた日産カップでハーフマラソン初優勝を飾った。ロンドン・パラリンピック代表の実力者を破っての堂々の勝利。若さを前面に出した積極的なしかけが魅力で、リオデジャネイロ・パラリンピックの代表選考レースとなる、2月の東京マラソンでも注目されそうだ。
日産カップは神奈川県横須賀市の追浜駅前をスタートし、日産自動車追浜工場内の自動車のテストコースとの間を3周する車いすマラソン大会。4連覇中で、ロンドン・パラの800メートル、マラソン代表の樋口政幸(36)が今回も本命だった。
しかし鈴木は樋口を追走、時に先導しながら最後の駅前商店街に入るところでスパート。車いす陸上は先頭を風よけにして後ろについた方が6~7割の力で追走できるので、最後の最後で2番手がまくることがよくあるが、鈴木の逃げが樋口の走力を完全に上回り、3秒差をつけて47分0秒でゴールテープを切った。
これまで常に樋口の後じんを拝してきたという鈴木は「大きな壁だった樋口さんに初めて勝てた」と喜ぶ。樋口は「途中で何回もしかけたが引き離せず、ラストで僕の方がつぶれた。完敗です」と脱帽だった。
鈴木は昨年11月にあったリオのマラソン代表選考レース、大分国際でも世界ランク1位のマルセル・フグ(スイス)とのマッチレースに持ち込もうと最初から飛ばしたが、フグの調子が悪かったため集団にのみ込まれ、結局9位に終わった。
10月の世界選手権でも800メートル、1500メートルともに決勝に進めなかった。だが日本パラ陸連の幹部は、有力選手相手にも物おじせずにしかけるレース運びを評価。「樋口に次ぐ存在になった」とみる。
交通事故などで障害を負ってから始めるため、比較的年齢の高い選手が多い車いす陸上だが、生後8カ月の事故で下肢の自由を奪われた鈴木は小学5年生で見いだされ、2014年、育成部門の強化指定選手に。昨年は全体の強化指定と、体ができてくるにしたがって力を急速に伸ばした育成エリートだ。
本人はリオではトラック2種目で金メダルを目指し、「今のマラソン参加は遊び。楽しく走れればいい」と言うが、初のフルマラソンだった昨年の東京マラソンも2位。マラソン3回目となる今年の東京でも、台風の目となってかきまわす可能性がある。
(摂待卓)
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