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ラグビーに学ぶ日本の進む道 五郎丸氏と直木賞・安部氏が対談

勤勉さ、世界で輝く

(更新)
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ラグビー日本代表の五郎丸歩選手と、直木賞作家の安部龍太郎氏。異色の組み合わせだが、ともに福岡県八女市にルーツを持ち、楕円球に親しんできたという共通点を持つ。12月上旬、五郎丸選手が所属するヤマハ発動機の本社で2人が対談した。ワールドカップ(W杯)での日本の大躍進、地方で育ったことの強み……。対話を進めるうちに、勤勉さで世界に挑んでいくという日本の進むべき道も浮かんできた。

五郎丸氏―生きる力、田舎が育む

 ■安部氏―野武士の風格、現代に

安部龍太郎氏 五郎丸さんのお父さんのお育ちになったところと、僕の生まれたところはすぐそばなんです。八女には行かれたことはありますか。

五郎丸歩氏 1回だけあります。山の中ですね。

安部氏 このへんの集落には五郎丸さんが何軒かあって、僕の友人にも五郎丸という姓が何人かいたんですよ。南北朝時代の南朝方の落人の集落なんです。五郎丸さんのプレーを見ていると何となく野武士みたいな感じがしてね。僕も(小説で)歴史を扱っていますけど、やっぱりそういう所で600年ほど潜んで生きてきた人たちの気持ちみたいなものを感じるときがあるんです。ラグビーをやっていて、そういうものを感じることはないですか。

五郎丸氏 名前の由来を聞いたのは最近なんです。そんなに意識することはなかったですけど。

安部氏 五郎丸さんのお父さんは中学を卒業して福岡に出られたんでしょうけど、僕も中学を卒業して田舎を出ているんですよ。それで久留米高専に行って東京に出て、家族を持って。ずっと異郷で戦っている感じはします。日本であろうが外国であろうが、古里以外は全部異郷だっていう感覚がありますよね。

五郎丸氏 あります。

安部氏 地方の自然とか歴史とか人情というような、長い間、培われたものの中から人材が育ってくるということの一つの証明が五郎丸さんだったような気がする。日本が失いかけているものです。日本人の精神とか忍耐とか責任感とか、努力を続けていく勤勉さみたいなものをしっかり見せていただき、非常にうれしかった。

五郎丸氏 都会の人に負けたくないっていうのはありますよね。田舎で育った方が、間違いなく生きる力というのは強いわけですよね。勉強っていうのは後からできるわけで、生きる力っていうのは育った環境でしかつくれないわけじゃないですか。都心で育つよりも、田舎で育った方が人として強くなれるんじゃないかというのは自分の中にあります。

安部氏 八女の人たちがみんな、五郎丸さんをとても誇りにしています。時間ができたときには八女に来てください。

安部氏―泣いた南ア戦のトライ

 ■五郎丸氏―強い思い、日本を変えた

安部氏 W杯の南アフリカ戦の最後のトライの瞬間は、日本中のファンが泣いたと思います。僕も泣いたんですけど。

五郎丸氏 夢の中にいるような感じでした。日本ラグビーが今後、どうなるかという大きな大会でした。過去2回W杯で優勝した南アに勝つことで、世界のスポーツ史に日本のラグビーが名を残した。2019年に日本でW杯が開催されるけど本当にいい風が吹いた。

安部氏 朝5時半からものすごい練習をなさったんですね。嫌だというのはなかったんですか。

五郎丸氏 (嫌だと)毎日思いましたが、選手たちは日本のラグビーを変えないといけないという強い思いだけでしたね。日本のスポーツ界は海外に出て一流のプレーヤーになる流れがある。僕は海外に出たことがないから、日本でもこれくらいの選手が育つと自分自身で証明したかったのもあります。

安部氏 体の大きな選手が相手でもプレッシャーを感じなくなった。

五郎丸氏 「日本人は小さいから」と努力しないケースが多いが、今回の日本は海外の倍近くのトレーニングで体を大きくして、なおかつ勤勉さと運動量の多さを前面に出した戦い方をした。技術だけでは戦えない。

安部氏 (日本代表の)外国人も同じトレーニングをした。

五郎丸氏 (W杯までに)強豪のウェールズ、イタリアに勝っても世の中がこっちを見ることは一切なかった。外国出身選手がいるからと思われていたから。W杯で彼らが日本のために体を張る姿とか家族との時間を削って努力する姿を見ると、(外国出身の選手でも代表になりやすい)ラグビーが理想の姿だと考えるに至りました。五輪など日本人しかプレーできない方がおかしいというか。

安部氏 日本は20年以上前からそういう形のチームだったがそれでも勝てなかった。今回扉を開けていただいてうれしかった。僕も久留米高専で10番(スタンドオフ)をしていて、ペナルティーゴールを蹴っていた。あの正確性を確保できるまでかなり時間がかかったんじゃないですか。

五郎丸氏 4年前までは感覚でボールを蹴っていた部分があった。「ルーティン」ってよくいわれるけど、感覚を紙に書いて自分のものにしていきました。キックを蹴るまでの動作を4段階に分けて評価する。例えば1段階が10点満点中何点だったか。どこの段階がうまくいっていないか分かるので修正しやすい。

安部氏 今大会のベストプレーは何ですか。

五郎丸氏 南ア戦の(後半28分の)トライですかね。個人のトライというより全員が自分の仕事を百パーセント全うしてトライが取れた。大会前からずっと練習していたんですけど、1回もうまくいったことのないプレーだった。全員がいいコースを走って、自分の役目を果たしたトライだったので、本当によかったですね。

五郎丸氏―日本人、可能性大きい

安部氏―人格完成、仕事の中に

安部氏 今年のシーズンは大変でしょう。これだけ(イベントなどで)スケジュールがあって。

五郎丸氏 日本代表の(練習の)方がもっとすごいんで、なんていうことはないです。心身ともにそれくらいハードなトレーニングを積んできました。

安部氏 これから(現地のクラブに期限付き移籍するため)オーストラリアにも行かれる。2~8月に向こうで、帰ってきて日本でプレーするのは大変じゃないですか。

五郎丸氏 この4年間、ほぼそういう生活でした。(今年までの)代表合宿の期間を豪州に行くという感じです。

安部氏 この忍耐力と勤勉さは日本中の人が手本にしなきゃいけない。僕も国内の小説を書いてきたんですけど、4年くらい先に中国を舞台にした小説を書こうとしている。自分にできるかな、大風呂敷を広げてしまったなと思うときもありますが、できるって証明していただいたんで「俺も負けちゃいられない」って気持ちになりましたね。

五郎丸氏 一番過酷なスポーツであるラグビーが世界の舞台で結果を残せたのは、日本のスポーツ界にとって本当に大きかったですね。

安部氏 僕も鎖骨を2度骨折して挫折したんです。五郎丸さんも中3の時に鎖骨を折ったり、腕や顎を骨折されたり。

五郎丸氏 色々なところが折れましたね。治ったらその分、丈夫になるんで、体はどんどん丈夫になっています。(笑)

安部氏 4年先のW杯はどうですか。

五郎丸氏 プレーしているか分からないです。簡単に目指すと言えない自分がいる。それだけ大きなものを背負わなくちゃいけない。今までチームのために自分を犠牲にしてきたけど、これからは少し自分にフォーカスを当て海外でどこまでできるか試したい。

昔は体は大きくなかったんです。大学(早稲田大学)に入った時は身長182~3センチで体重79キロくらい。今より20キロくらい小さかった。しっかりしたトレーニングと栄養と睡眠で、日本人でもできると証明することをチャレンジとして楽しみたい。日本人には可能性がいっぱいある。「自分の時間を削ってでも日本のためなら」という考えが僕自身、この4年で大きくなった。日本人の勤勉さは本当に強みです。

安部氏 仕事でも「道」にしてしまうんですよね。自分の人格や人生の完成を仕事の中に見るっていう生き方をする。

五郎丸氏 日本代表が24年間(W杯で)勝てなかったことがラグビーにスポットが当たらない原因でしたが、今回歴史を変えたことで本当に多くの方に応援してもらっている。いかに継続するかが大事になってきます。

安部氏 我々もあのような活躍を19年に国内で見たいですね。

 ごろうまる・あゆむ 1986年福岡県生まれ。3歳でラグビーを始め、佐賀工業高校時代には3年連続で花園出場。早稲田大学では1、2、4年時に大学選手権制覇。2005年日本代表デビュー。代表キャップは57。最多得点記録を更新中。08年ヤマハ発動機入り。11、12年度に得点王&ベストキッカー。
 あべ・りゅうたろう 1955年福岡県生まれ。久留米工業高等専門学校卒。図書館司書を経て、90年「血の日本史」で単行本デビュー。2005年「天馬、翔(か)ける」で中山義秀文学賞、本紙連載の「等伯」で13年に直木賞。「信長燃ゆ」はドラマ化、来年1月2日夜にテレビ東京系で放送される。

信じる道貫く大切さ

「自身のベストプレーは」という安部氏の問いに、五郎丸氏は南ア戦のトライを選んだ。「全員が自分の仕事を百パーセント全うした」という理由が五郎丸氏らしい。各選手がおとりになって相手をひき付け、正確なパスをつないだから、自分にボールが回ってきた。

チームではバックス14人を束ねる副将。他選手の不調を問う報道陣に語気を強めて反論するなどW杯中はリーダーの責任感をみなぎらせていた。

安部氏が「野武士」と形容したように、五郎丸氏は武士団の頭領のような芯の強さと荒々しさを持っている気がする。それは安部氏の作品の登場人物にも共通する。「等伯」で描かれたのは七尾(石川県)から京に上り、数々の困難に遭いながらも画業を大成する長谷川等伯の姿だった。

南朝最後の親王、良成親王の具足など八女にはゆかりの品や人が残る。この地にルーツを持つ2人が強調したのは中央への反骨心。単に地理的な問題ではないのだろう。時流や他人に流されず、信じる道を進めるか。住む世界は違うが、大事にするものは案外似ているようだ。

(運動部 谷口誠)

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