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クラブ経営、充実と苦労 成功は能力×情熱×考え方

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FC今治の今季の戦いは、日本フットボールリーグ(JFL)昇格を懸けた11月の「全国地域サッカーリーグ決勝大会」で幕を下ろした。残念ながら我がクラブはJFL昇格を果たせず、来年も四国リーグを主戦場にすることになった。オーナーとして目標を達成できなかったのは残念だが、周りの人に助けられながらクラブ経営に奔走した日々を振り返ると、本当にあっという間に過ぎた充実の1年だった。

FC今治はJFL昇格ならず

全国9地域のリーグチャンピオンと全国社会人選手権の上位入賞チームがJFL昇格を懸けて戦う全国地域リーグ決勝大会。今年は11月6日から8日まで大分県(A組)、島根県(B組)、愛媛県(C組)の3会場に4チームずつ分かれて1次ラウンドを行い、FC今治はC組でサウルコス福井(福井=北信越地域代表)、阪南大クラブ(大阪=全国社会人2位)、アルテリーヴォ和歌山(和歌山=関西地域代表)と戦った。結果は1勝1PK勝ち1敗の勝ち点5。グループ1位の座を福井(勝ち点7)に譲り、21日から23日まで高知県春野で行われた決勝ラウンドには進めなかった。

決勝ラウンドに勝ち上がったチームから最終的にJFL昇格を果たしたのはA組、B組をそれぞれ首位で突破したブリオベッカ浦安(千葉=関東地域代表)とラインメール青森(青森=全国社会人4位)だった。浦安は日本代表の選手時代、同じ釜の飯を食べた都並敏史氏がテクニカルディレクターを務めている。旧友の成功を祝福しつつ「来年は俺たちの番だ」と言いたいところだ。

もともと、FC今治のオーナーになったときから、一番苦労するのはJFL昇格のところだと思っていた。「10年後には今治をJリーグで優勝を争えるクラブにする」と大風呂敷を広げた私も、そこに至るロードマップの中でJFL昇格には「2年」という時間を割いていた。1次ラウンド、決勝ラウンドとも3日間で3試合を戦うという、プロの世界ではあり得ない過酷な日程のせいもあり、JFL昇格を懸けたステージには何が起こるか分からない要素がつきまとう。フィジカルコンディションを整えて戦えないために、戦術や技術以外の部分で決着する要素も膨らむ。来年は、今回の悔しさを糧に、どんな形になってもJFLに昇格できるチームをつくる。そんな気持ちを新たにした。

オーナー、忙しさは監督時代の3倍

オーナー1年目のシーズンを終えて思うのはクラブ経営の大変さである。1日に100件くらいのメールが来て、朝5時半から起きて処理している。忙しさは監督時代の3倍になった感じだ。年がら年中、走り回っていて、カミさんには迷惑をかけているけれど、まったく知らない世界に飛び込んだから毎日が勉強というか、新しいチャレンジができているやりがいもある。最初はBS(貸借対照表)とかPL(損益計算書)の読み方も知らなかったくらいだから。この1年、必死で試行錯誤しながらやってきて、ようやく何とか会社らしくなってきた。

正直、私も含めていろいろな面で甘さはあった。スタートアップした企業の9割は最初の3年でつぶれるという。生き残る1割を目指しているのに甘くないか。自身への戒めも込めて社員には途中からかなり厳しいことを言うようになった。

初年度は何とか収支をトントンに持っていけそうだ。シーズン途中の選手補強の費用や予算に計上していなかった小さな出費がかさみ、かなり苦労した。しかし、経営の素人の集まりゆえに、日々遭遇することがすべて実になる実感もある。

サッカーの現場にも口を出すようになった。中国の杭州緑城で監督をしていたとき、オーナーにあれこれ口を挟まれて困ったものだった。それでカミさんに「同じことをしたらダメよ」と言われていたのだが、よくよく考えたら監督経験はチームの誰よりも自分の方が積んでいる。この経験は伝えた方がいいと思うようになって定期的に監督、スタッフ、選手らとオーナーミーティングを開くようになった。

「口は出す。でも、採用するかどうかはおまえらが決めろ。採用しなくても怒らないよ」と宣言した上で。

情熱や考え方は、すぐ変えられる

実際、現場では私の意見を反映したスタッフの考えより、選手たちの自主性を尊重することもあった。例えば、CKの守り方。一番やられないと思われるポジションは分かっていても、あえて選手たちに決めさせる。自分たちで決めたポジションを取った以上、選手も絶対に失点はできないという責任感が働く。選手同士で集中力を絞り出し、必死に声を掛け合って守ろうとする。それは「監督がいうから、そのとおりに立っていました」という人任せの意識で守るより、よほどいい守備になる。

四国リーグの優勝が決まった翌日のオーナーミーティングでこんなこともあった。その日から1カ月後に全国地域リーグ決勝大会がある。選手には「成功には〈能力×情熱×考え方〉の掛け算で近づける。能力は簡単に変わらない。でも、情熱や考え方はすぐに変えられる。特に考え方が大切だ。JFLに上がれば人生が変わる。この1カ月で人生を変えたいと願うのなら、毎朝起きたら『俺はJFLに行く』と大きな声を出して自分に誓え。その後、1日の行動のすべてを初戦に勝つためのものとしろ。1分、1秒も無駄にしないと誓え。それができないなら残りの給料は払うから練習に来なくていい」という話をした。

選手はそれだけの覚悟を持つと、その場では約束してくれた。ところが、数日後、練習試合を見にいったら、自陣ペナルティーエリア内のDFに横パスを出してボールを奪われた選手がいた。その選手は「ゴメン」とDFに謝り、DFは「ドンマイ」と許した。

「人生懸ける、はその程度か」

ハーフタイムで監督が後半に向けた指示を出した後、私は言った。

「おまえらの、人生を懸ける、というのはその程度か。俺だったら、横パスした人間の胸ぐらをつかんで『俺の人生を台無しにする気か』と激怒したぞ。ふざけるな。こんな試合、時間の無駄だ」

そう捨てぜりふを残して、後半は見ずに帰った。

決して褒められたことではないかもしれないけれど、Jリーグを目指す集団なら、持って当然の意識だとも思う。

苦労といえば、FC今治の目玉で、自分にとっては自家薬籠中のものと思っていたトレーニングメソッドづくりも予想以上に難航してしまった。

日本が世界で勝つためには、10歳ころから16歳くらいまでの間にきちんと身に付けなければならないものがあり、その身に付けた「型」とか「土台」を基に、思いきり自由に羽ばたくサッカーをさせたい。そう考えて、つくり始めた「岡田メソッド」なのだけれど、着手すると、つくっては壊し、つくっては壊し、の繰り返し。試行錯誤の末、いま、ようやくシンプルな形で先が見えてきた。

育成メソッド、トップチームにも効果

予想以上に時間がかかったのは、それだけ、いいものをつくろうとしているからではある。そもそもメソッドは「完成」するということもないのだろう。世界のトップレベルのサッカーの戦術や技術が日進月歩で進化していく以上、育成年代が身に付けるべき内容も微妙に変化していく。更新や見直しの作業は常に必要になるからだ。

メソッド作成の過程でFC今治のトップチームがあまりに弱いと説得力がないということで、当面はトップチームにもメソッドの一部を落とし込むようになった。そちらにエネルギーを取られた面もある。その結果、育成のためのメソッドが思った以上に大人にも効くこともわかった。「ここまでチームを変えられるのか」という、うれしい驚きがあった。

一方で、肝心の育成年代の子供たちに、メソッドがどういうインパクトを与えられるかの見定めはまだ十分とはいえない。

メソッドの中身を詰めながら、それをどうマネタイズ(収益化)していくかという作業も同時に進めている。本当のメソッドは指導者を養成して伝えていくしかないと思っている。いま、プランとしてあるのは、汎用基本編として実際の練習を4台のカメラで撮影して3Dに加工し、いろいろな角度や方向からタブレット等で見られるようにして、一般の人にも売り出していくというもの。また、メソッドそのものは高価にする必要はなく、アフターケアやメンテナンスの部分で収益をあげればいいという考えも成り立つ。そんないろいろな議論を戦わせている最中だ。

指導者の向上で日本は強くなる

メソッドづくりの動機の一つには指導の現場であれこれ悩んでいるコーチを助けたいという思いもある。現場のコーチたちがPDCAサイクル(Plan〈計画〉→Do〈実行〉→Check〈評価〉→Act〈改善〉)に自分のチームを持っていくための有効なツールにメソッドがなってほしいと。

自分が指導するチームのゲーム分析をしていて「うまく試合がいっていないのは分かるけれど、何がうまくいっていないか分からない」ために「何を練習していいか分からない」という悩みを抱えたコーチは日本中のあらゆる階層にいる。

どうしたら試合を見る目を養い、解決策を講じられるのか。私はメソッドを通じて「プレーモデル」というコンセプトを提案し、それに照らし合わせながら問題点をチェックし、解決するトレーニング方法も選んでいけるようにしたいと思っている。

新しい有望株が出て来ない、もう「頭打ち」とか、いろいろな風評を日本サッカーに対して聞くけれど、私は指導者の質を向上させることで日本サッカーはさらに強くなれると思っている。格闘するメソッドづくりも、優秀な指導者の養成につながってこそ、意義は増すと思っている。

(FC今治オーナー、サッカー元日本代表監督)

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