豪華メンバー、ラグビー世界選抜 日本代表15日に対戦
ラグビーワールドカップ(W杯)イングランド大会の開幕まで1カ月あまり。日本代表は15日、強化試合として世界選抜(World XV)と東京・秩父宮で対戦する。世界選抜はほぼ全員がニュージーランド(NZ)、南アフリカ、オーストラリアなど南半球の強国の代表経験者か候補者で、これだけの豪華な顔ぶれを一度に見ることができるチャンスはめったにないだろう。注目選手や試合の見どころなどを紹介する。
FW、ベテランと若手が融合
カール・ハイマン、バッキース・ボタ、アリ・ウィリアムズ、ピエール・スピース…。FWにはラグビー好きならば誰もが知っている名選手がずらりとならんだ。NZのハイマン(35)はかつて、世界最高のタイトヘッドプロップ(右プロップ)と称され、フランスのトップクラブ、トゥーロンでも活躍してきた。同じクラブに所属するロックのボタ(35)は2007年W杯フランス大会の南アの優勝メンバーだ。気性が荒く、ラフプレーが多いのが玉にきずだが、2メートル2センチの長身を生かし、ジャンパーとしてラインアウトの中核を担う。
そのボタとこれまで幾度も空中戦を繰り広げてきたのが同じ身長のNZのウィリアムズ(34)だ。ラインアウトや密集戦だけではなく、フィールドプレーも得意で、タッチライン際をボールを持って走るシーンも目立つ。南アのNO8、スピース(30)は194センチ・111キロの体格で100メートルを10秒台で走る運動能力の高さが魅力だ。このほか、豪州のベン・アレクサンダー(30)、ベン・ロビンソン(31)の両プロップ、NZのフッカー、アンドリュー・ホア(36)らスクラムの第1列にも実力者がそろう。
ギルら有望株も
FWの若手では個人的にリアム・ギルに注目したい。豪州の23歳、ポジションはオープンサイドフランカー。豪州では同じポジションにマイケル・フーパー、デイビッド・ポーコックという強力なライバルが存在し、ギルは代表候補から漏れてはいるが、密集戦でボールを争奪する力は世界レベルだ。彼のような有望株のプレーが見られるのも世界選抜の魅力だろう。
BKは若い力が結集
BKは多くが20代という若い力が結集した。注目は豪州の万能BK、ジェームズ・オコナー(25)。豪州史上、2番目に若い18歳で代表デビュー。フィールド外の素行の問題などに加え、今季はプレーに精彩を欠いたこともあり、W杯の候補から漏れてはいるが、その才能は世界の誰もが認める。豪州代表候補に名を連ねているクリスチャン・リアリイファノ(27)はスタンドオフとセンターの両方をこなす。正確無比のゴールキックが大きな武器だ。ウイングのタンゲレ・ナイヤラボロ(23)はフィジー出身。194センチ・123キロの巨漢を日本代表がどうやって止めるのか、興味深い。
トップリーグ所属の外国人選手も
今回の世界選抜には日本のトップリーグに所属する選手も名を連ねた。中でも日本代表にとっての脅威は、豪州出身でパナソニックに所属するスタンドオフ、ベリック・バーンズ(29)だろう。キック、パス、ラン、タックル、状況判断といずれも一級品で、パナソニックを2年連続でトップリーグの覇者に導いた。本人も2年連続で同リーグの最優秀選手(MVP)に輝いている。このほかNZ出身で神戸製鋼のスクラムハーフ、アンドリュー・エリス(31)、豪州出身でコカ・コーラのウイング、ニック・カミンズ(27)、FWではNZ出身でキヤノンのフランカー、アダム・トムソン(33)らが参戦する。
世界選抜、国・地域の代表として選出
ところで「世界選抜」の選手はどういった基準で選ばれているのだろう。日本ラグビーフットボール協会などによると、世界選抜は常設のチームではなく、いわゆる招待チームだ。今回、日本代表が強化試合に招いたように遠征や試合があるときだけチームが編成される。似たようなチームに「バーバリアンズ」がある。バーバリアンズに選ばれる選手はクラブチームを代表しており、試合の際はバーバリアンズのジャージーを着ながら、ソックスだけは所属クラブのものをはくという伝統がある。これに対し、世界選抜は国・地域の代表経験者や代表候補から選手を選んでいるようだ。運営主体は世界選抜もバーバリアンズも同じという。
日本人選手で過去、選ばれたのも、いずれも代表経験者だ。プロレスラーに転向したプロップの原進氏(阿修羅・原)が1976年に初めて選出。このほか俊足ウイングとして明治大学の黄金時代を築き、その後に同大の監督も務めた吉田義人氏や、主将として関東学院大学を初の大学選手権優勝に導き、日本代表でも主将を務めたNO8の箕内拓郎氏が選ばれている。
今回、世界選抜を率いるのはロビー・ディーンズ氏。南半球最高峰のクラブリーグ、スーパーラグビーでNZのクルセイダーズを常勝軍団に育て上げ、豪州代表監督も歴任した知将で、現在はパナソニックの監督を務めている。
(電子編集部 松井哲)