広がる休業、耐える1カ月 緊急事態宣言発令
新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大を防ぐため、政府の緊急事態宣言が7日、東京など7都府県に発令された。休業の動きは大規模な商業施設などにとどまらず、保育園や飲食店にも広がる。通院せざるを得ない高齢者からは感染への不安の声が漏れる。にぎわいの消えた街で、不自由な暮らしに耐える正念場の1カ月が始まった。
実際にどんな施設に休業を要請するかは7都府県の知事が判断する。
都は保育所については機能を維持したい考えだが、渋谷区は認可保育所などの保育施設を原則休園とする方針だ。区によると、対象は私立を含め約70施設に上る見通しで、10日から休園する。保護者全員が警察官や医療従事者などの家庭に限り、一部施設で特別保育として預かる。
開園を続ければ子供の送迎にくる保護者らの移動が避けられず、「感染拡大を防ぐという緊急事態宣言の趣旨にそぐわないと判断した」(区の担当者)。7日夕、区内の保育所に子供を迎えに来た保護者からは「仕事との両立は厳しい」と嘆き節が漏れた。
息子(2)を預けている出版社勤務の女性(41)は同業の夫とともにテレワーク中だ。自宅に書斎はなく、親子3人リビングで一日過ごすことになる。「日中は夫と交代で息子にビデオを見せるなどしてしのぐが、子どもが寝静まった後に仕事をせざるを得ない」と苦い表情を浮かべる。
同じく2歳の息子を持つ事務職の女性会社員(35)は7日、休園の方針を聞いて慌ててベビーシッターを予約した。1日2万円の料金を1カ月払い続ける覚悟だ。「あまりに負担が大きい。公的な補助は出ないのだろうか」と首をかしげた。
都内では大規模でない飲食店も休業要請の対象から外れる可能性があるが、すでに営業の自粛を決める店も出ている。
「感染拡大を防ぐには仕方ない」。東京・神楽坂でフランス料理店を営む男性(43)は緊急事態宣言の発令を受け、7日からレストランの営業を自粛。「最近はランチの客も減り、夜の予約は入らない。レストランとしては立ちゆかない」と肩を落とす。
緊急事態宣言が続く1カ月間は、レストランの代わりにテークアウト料理を開始。少量の材料を仕込み、毎日違うメニューを用意するなど工夫を凝らすつもりという。男性は「ただ閉めているだけでは従業員の給料も払えず、閉店の可能性もある。なんとか収益を上げられるように工夫を凝らしたい」と話す。
緊急事態宣言の対象地域となる福岡市の屋台でも、すでに休業する店が相次ぐ。中洲などの約40店が加盟する博多移動飲食業組合の石橋三政組合長(70)は「屋台は密閉、密集、密接の3条件がそろってしまう。繁盛店でも客が入らない日もあり、半数以上の店が自主的に休業している」と明かす。石橋さんも感染を恐れ店を休んでいる。客の外出自粛が長引けば「廃業を選ぶ店も出るかもしれない」。
東京都は病院や診療所など医療インフラについて「社会生活を維持するうえで必要」として、休業は要請しない考えだ。医療機関は、医師らの感染リスクを抱えながら診療を続けることになる。
東京都江東区の住宅街、耳鼻科や内科などのクリニックが集まる8階建て複合ビル。消毒液の設置などを徹底して診療を続ける構えだが、ビルの入り口には7日夕、「患者および医療従事者に感染が確認された場合は当面の間、休診させていただく」との案内文が張られていた。
換気のため、入り口のドアが開けっぱなしの診療所も。7日午後に訪れた江東区の女性(88)は昨年から肩や膝の痛みに悩み、月に2~3回ほどビル内の整形外科で痛み止めを打つ。「感染が怖くて外出したくない」としつつ、「今は診療が続いているが、状況が変わって休診になったら体の痛みに耐えられなくなる」と不安げに話した。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
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