英労働党、新党首に親EU派のスターマー氏
【ロンドン=中島裕介】英国の最大野党・労働党は4日、党首選の結果、コービン党首の後任に親欧州連合(EU)派のキア・スターマー氏(57)を選出した。同党はEU離脱が争点となった2019年末の総選挙で大敗し、足元では新型コロナウイルス対策に奔走する政府・与党に比べて埋没している。スターマー氏は10年間政権から離れている同党を、ジョンソン政権の対抗勢力に再建するという難題を担う。
スターマー氏は元検事で15年に英議会下院に初当選した。隠れEU離脱派といわれたコービン氏とは一線を画し、EU残留を目指す再国民投票を模索。経済政策でも産業国有化など社会主義的政策を掲げたコービン氏よりは、中道路線を取るとみられる。
党首選では段階的に候補者が絞られた後、2月下旬からスターマー氏とナンディ氏(40)、ロングベイリー氏(40)の3人が争う党員などの郵送投票を行った。当選したスターマー氏は56%の得票を集める圧勝だった。
選出後、スターマー氏はツイッターで新型コロナの感染拡大に触れ「今は人命を救う政府が必要だ。国益のため、私の労働党も政府と建設的に連携する」と語った。
ただ24年までに予定される次期総選挙までに、下院の56%の議席を握る与党・保守党の対抗軸になるのは容易ではない。保守党の支持率はジョンソン政権の新型コロナへの姿勢が好感され50%超を維持。総選挙後の12月末時点より10ポイント弱伸ばしている。逆に労働党の新党首選出の晴れの舞台は、英国で自宅待機令が出ているため党ホームページなどでの発表にとどまり、埋没感は拭えない。
政策面でも現政権が休業者の大規模な給料肩代わり対策など強力に財政出動しており、再分配を重視する労働党はお株を奪われた格好になっている。英紙フィナンシャル・タイムズは新型コロナの対応が迫られる中でも「検査や人工呼吸器の整備など大事なテーマに関して政府を問いただし、野党の責任をみせることができる」と指摘する。
党内の再結束も課題だ。コービン体制では自らの社会主義的政策に理解を示す議員を幹部に就けた。一方で党内にはブレア元首相が掲げたような中道左派的な政策を支持する議員も混在し、コービン派と対立関係にある。中道寄りのスターマー氏は党首選で「党内の闘争を続けていたら保守党には勝てない」と訴えており、党内融和を図る方針だ。