東北の自治体、五輪延期で対応に追われる
東京五輪・パラリンピックの延期を受け、東北の自治体が対応に追われている。サッカーの会場がある宮城県はPRイベントの発注を急きょ取り下げた。盛岡市は聖火リレー当日までの日数を示すボードの設置を中止した。各県の自治体トップらは延期に理解を示す一方、地域経済への影響を懸念する声もあった。
「延期と聞き、慌てて発注を止めた」。宮城県オリンピック・パラリンピック推進課の担当者は話す。男女サッカーを開催する宮城スタジアム(同県利府町)の周辺やJR仙台駅付近で五輪を盛り上げるPRイベントを業者に発注していたが、取りやめた。数千万円かけた予算の一部は戻らないという。
スタジアムは五輪後、スポーツやコンサートなどの利用が見込まれるほか、2021年夏以降も陸上競技大会を開く予定だ。同課の担当者は「会場を押さえるための調整を急ぐ必要がある。新しい日程を早く示してほしい」と気をもんでいる。
県は「復興五輪」と位置づけ、東日本大震災から復興した被災地の姿を国内外にアピールできる好機と期待していた。村井嘉浩知事は25日、県庁で「延期になっても復興五輪の大義は変わらない」と強調。利府町の熊谷大町長は「おもてなしの精度を上げる時間をもらったと思っている」と前向きに受け止めた。
福島県は聖火リレー中止について県内関係自治体に電話連絡を続けたほか、リレーのランナーにも電話した。リレー関連イベントの招待客の宿泊予約をキャンセルしたり、県内7カ所に設置しているカウントダウン表示板の電源を切ったりするなど対応を急いだ。
聖火リレーの出発地点だったサッカー練習施設「Jヴィレッジ」(福島県広野町、楢葉町)では設営した桜の木を撤去。野球・ソフトボールの会場の県営あづま球場(福島市)でもフェンスの設置工事を休止した。
盛岡市は25日、市内で聖火リレーを行う6月19日までの日数を示す「聖火リレーデイカウンター」の設置を取りやめた。当初は26日に市役所本庁舎前に設ける予定だった。イタリアとキューバのホストタウンに登録している仙台市も事前合宿で利用する予定だった宿泊施設や練習施設などのキャンセルに対応する方針だ。
自治体や経済団体のトップは延期に対し、おおむね理解を示した。福島県の内堀雅雄知事は「新型コロナウイルスが猛威を振るう中、重い判断に至ったと考えている。安全・安心を最優先すれば、やむを得ない」と表明。山形県の吉村美栄子知事は「聖火リレーも始まろうとしている矢先だったので大変残念。ただ、中止でなくて良かった。最悪の事態は免れた」と語った。
山形商工会議所の矢野秀弥会頭は「無理して開催するよりはマイナスが少ない」と述べた。
一方、景気への影響を危惧する声も聞かれた。秋田県の佐竹敬久知事は「東北6県は五輪に合わせ、インバウンド(訪日外国人)誘客を進めてきた。1年後になることで宿泊施設や飲食店は当てが外れ、(新型コロナと五輪延期の)ダブルで影響を受ける」と懸念した。