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英国「休校せず」から暗転 イタリアとの不吉な符合

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新型コロナウイルス対策で独自路線を取っていた英政府がついに他国と同じような封じ込め策に舵を切った。ボリス・ジョンソン英首相は3月23日夜、時おり拳を固く握り締めながら厳しい表情で国民向けのビデオメッセージを発信した。「みなさんは家にいなくてはいけない」と語り、食料品や医薬品の買い物などを除き、最低3週間の外出禁止を求めた。

1日1回、運動のための外出は認めるが、公共の場では同居人を除いて3人以上で会うことを禁じた。ジョンソン首相は「もし友人に誘われたら断るべきだ」とも語った。違反者に対しては警察が罰金を科すなど取り締まりの権限を持つ。

これまで英政府は、他の国と比べると緩い新型コロナ対策を講じてきた。世界各国が学校の休校や外出制限に踏み切る中でも、一斉休校には踏み切らなかった。英政府のパトリック・ヴァランス首席科学顧問は、「休校は最小限の効果しかない」との見解を示していた。

しかし、23日時点で感染者数は6650人、死亡者数が335人(24日時点では感染者数が8164人、死者数が423人)に上るなど状況が悪化。20日に飲食店の営業禁止を求めたものの、21日と22日の週末には英国民が全国各地の公園などに大挙して押しかけた。多くの人々が行き交い、さらなる感染拡大を引き起こしかねないとの危機意識から、英政府は厳しい対策に方針を転換した。

新型コロナの感染拡大に対して、英国民はどのように対応しているのか。消費行動を見るとパニックに陥っているように見える。

欧州で感染が拡大してからスーパーマーケットなどで品薄な状況が見受けられたが、16日に英政府が感染リスクが高い人は自宅にとどまるように要請してからは、パニック消費に拍車がかかった。

英国ではトイレットペーパーなど特定の商品が品薄になるだけでなく、スーパーの商品が根こそぎなくなっている。野菜や果物など生鮮食品もあっという間になくなり、スーパーの商品棚のかなりの部分が空になる店舗が珍しくない。

スーパーは購入点数の制限などを設けているが、パニック消費は収まりそうもない。商品の争奪戦の中で高齢者らが買い物できるように、通常の開店時間前に70歳以上の高齢者や持病や障害がある人だけが入店できる時間帯を設けるスーパーが増えてきた。

医療現場の混乱も始まっている。ロンドン北部のバッキンガムシャー州のNHS(国民保健サービス)の病院に勤めるレイチェルさんは、担当の糖尿病患者が新型コロナに感染し、早期の検査を要請したが、なかなか検査を受けられなかったという。検査に3日間待ち、3日後に陽性という結果が出た。「その間に患者からたくさんのせきを浴びた。自分も感染し、他の人にうつしていないか心配だ」と不安を隠さない。

医療従事者の負担が高まり、重症患者がNHSの受け入れ能力を超えてしまえば医療崩壊が起き、死亡者数が急増する可能性がある。そのため、ジョンソン首相は「体調が悪くなったら、すぐに自主隔離をしよう。NHSを守ろう」と繰り返し訴えてきた。買い物の時間を確保するのが難しいNHS職員に配慮し、NHS職員向けの専用コーナーを設けるスーパーもある。

「イタリアと同じ状況に近づきつつある」

英政府が繰り返し引用するのが、イタリアの事例だ。英国の人口は6648万人で、イタリア(6043万人)と規模が近い。そのイタリアで新型コロナによる死者数が世界最多になり、英政府はイタリアの状況を注視している。

12日には英政府は「イタリアから4週間遅れで感染が進んでいる」との認識を示し、16日には「3週間遅れ」とした。英政府のヴァランス首席科学顧問は、「英国は急激な拡大の一途にあり、イタリアと同じ状況に近づきつつある」と説明している。

20日には、英政府が発表した声明の中で「わずか2~3週間で現在のイタリアのような状況になる」と警戒を強めた。21日に英国では新型コロナによる死者数が233人に達し、これはイタリアが同数の死者数に達してからちょうど2週間後となっている。外出禁止を指示するのはギリギリのタイミングだったといえる。

8月までに25万人が死亡との試算も

英政府は12日の段階では、新型コロナの感染拡大をある程度受け入れ、重症化のリスクが高い人たちを守りながら、医療崩壊を防ぐために感染者が一気に急増するのを防ぐ戦略を取っていた。

感染をある程度受け入れて、多くの人が免疫をつけて、その人たちによって感染の急拡大を防ぐという「集団免疫」の戦略は、他国がほとんど取っていなかった。ヴァランス政府首席科学顧問は英BBCに以下のように語った。「私たちの目的は、完全に封じ込めることではない。それによって大多数の人が軽症で発症することになるので、ある種の『集団免疫』を作り出す」

これは、科学的な知見に基づく対策であるとして評価する識者もいた。だが、多くの批判が集まった。英国免疫学会のアーン・アクバル会長は、「コロナウイルスにはまだ分からないことが多く、長期的な免疫が成立するかどうかはまだ不明である」と指摘した。英国各地の数百人の科学者有志は14日、政府に公開書簡を送付。「イタリアやスペインなどと同様に、感染者数は短期間のうちに一気に増大する。現状の政策はNHSへの負荷をより高めるばかりでなく、必要以上に大勢の命を危険にさらす」と批判した。

英BBCによると、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームが、従来の緩い対策では8月までに25万人が死亡するとの試算を政府に示した。こうした専門家の批判や、イタリアなど諸外国の状況をみて、英政府は方針を転換し、「封じ込め策」に舵を切ることになった。

イタリアより1000人当たりのベッド数が少ない英国

今後の感染拡大を考える上で気になるのは、英国とイタリアに類似点があることだ。1つは原則外出禁止の措置を実施するタイミングだ。

前述のとおり、両国は新型コロナによる死者が233人に達したほぼ3日後に外出禁止を実施した。イタリアでは10日、英国では23日夜(実質的に24日)だった。今のところ両国の死者数の増加曲線は重なっている部分が多い。外出禁止を実施する前に感染が広がっている可能性があるため、英国でもイタリアのようにさらに感染が拡大しても不思議ではない状況だ。

ちなみに人口が6698万人と英国やイタリアとほぼ同規模のフランスは、外出禁止の措置が早かった。新型コロナによる死者数が127人だった16日に、外出禁止令を発表。すぐに警察による取り締まりを強化するなど、厳しい対策を実行している。

もう1つの類似点は脆弱な医療体制だ。経済協力開発機構(OECD)によると英国の1000人当たりの病床数は2.5と、イタリア(3.2)より少ない。両国は日本の13.1には及ばないのはもちろん、OECD平均の4.7を大きく下回り、医療体制に不安がある。緊縮財政の中で、医療関連予算を削ってきた点も似ている。

24日時点で英国の新型コロナによる致死率は5.2%に達した。米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、致死率の世界平均は4.5%だ。致死率の高い国は、イタリア(9.9%)、イラン(7.8%)、スペイン(7.5%)と続き、英国は4番目に位置している。

日本では当初、突然の臨時休校措置に批判が集まり、その最中にマイルドな対策を打ち出した英国を支持する声もあった。英国の対策が後手に回り、爆発的な感染拡大を引き起こしかねない現状は、医療体制が英国より充実する日本にあっても、油断や対策の遅れが致命傷になり得ることを示唆している。

(日経BPロンドン支局長 大西孝弘)

[日経ビジネス電子版 2020年3月25日の記事を再構成]

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