企業の景況感、新型コロナで過去最低 3月ユーロ圏PMI
【ブリュッセル=竹内康雄】新型コロナウイルスの感染拡大で企業の景況感が急速に悪化している。IHSマークイットが24日発表した3月のユーロ圏の総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は31.4と、2008~09年の金融危機の水準を下回って1998年の公表開始以来、過去最低だった。新型コロナが幅広い分野で景気を下押ししている。とりわけ移動制限や店舗閉鎖のあおりを受けて、サービス業の落ち込みが顕著だ。欧州各国は景気対策に動いている。
PMIは企業の購買担当者に新規受注や雇用などの景況感を聞き取り調査して指数化した指標。50が好不況を判断する節目となる。2月のPMIは51.6で、米中間の貿易摩擦解消に向けた合意などを背景に19年9月を底に徐々に改善傾向にあった。だが新型コロナの影響で急低下した。
IHSのウィリアムソン・チーフビジネスエコノミストは四半期ベースで2%の域内総生産(GDP)を押し下げる効果があるとした上で「より厳しいウイルス対策が実施されれば景気の冷え込みが一段と拡大する可能性がある」とコメントした。ユーロ圏最大の経済規模を持つドイツは37.2と09年2月以来の低水準。2位のフランスは30.2で過去最低だった。
「この数週間で西欧の状況が著しく悪化し、さらに直近では北米が悪化している」。グッチやサンローランを傘下に持つ高級ブランド大手の仏ケリングは20日、1~3月期の売上高が前年同期比約15%減るとの見通しを公表した。仏伊などでは外出が制限され、客足が遠のく。具体的な数値は示さなかったが、4~6月期も「大きく影響を受ける」と説明した。
仏独などユーロ圏の主要国は感染拡大を抑えるため、生活に欠かせない食料品店や薬局を除く店舗の閉鎖に踏み切った。移動の制限で運輸業や旅行業などが大きな影響を受けている。2月に52.6だったサービス業PMIは、28.4に急低下し、過去最低だった。
サービス業はこれまで底堅く推移し、中国経済の減速や貿易摩擦のあおりを直接受けた製造業の不振を補ってきた。その背景にあるのが堅調な雇用環境だ。ユーロ圏の1月の失業率は7.4%と、08年5月以来の低水準。企業は労働力を確保するために待遇を改善し、それが個人消費につながってきた。だが新型コロナの感染拡大で雇用環境の悪化は避けられない。
全便の95%の運休を強いられている独ルフトハンザ航空は全従業員の2割強にあたる3万1千人を時短勤務にさせる。日産自動車は生産を一時停止しているスペインの3工場の従業員約3千人の一時解雇を決めた。製造業とサービスを合わせた総合指数のうち、企業の採用への姿勢を示す雇用指数は2月の51.4から43.2に低下した。
米中の貿易摩擦や英国のEU離脱騒動が一段落し、明るい兆しが見え始めていた製造業にとっては新型コロナに冷や水を浴びせられた形だ。世界で生産停止が相次ぎ、域内外で供給網が途絶している。イタリアは北部に製造拠点を多く抱えるが、同国政府は必需品以外の生産を停止すると表明。製造業PMIは49.2から44.8に下落した。
仏自動車大手グループPSAは16日から欧州の工場を順次閉鎖した。同社は声明で理由を感染の急拡大や業者からの部品納入の中断、市場縮小と説明。閉鎖は27日までとしていたが、延長される可能性がある。鉄鋼世界最大手の欧州アルセロール・ミタルも自動車など素材供給先の需要減を反映して減産に踏み切る。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
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