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「するスポーツ」推進役に鉄道会社の潜在力

スポーツコンサルタント 杉原海太

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日本で大人がスポーツをしようとするとき、最大のネックは場所がなかなかないことだろう。

日本の競技団体はスポーツを「する」ことに関してリソースのほとんどを、学校に通う子供や少年少女を対象とする普及に振り向けているように思う。そもそも日本では「するスポーツ」の入り口として、学校教育の一環で整備されてきた「部活」が存在してきた。勉強をする場所のすぐ近くで多くの若者がスポーツの練習もできるのは、この仕組みの最大のメリットかもしれない。

大人の「するスポーツ」にハードル

一方、大人の「するスポーツ」は後回しの感が否めない。学校を卒業すると、学生時代に親しんだスポーツをやるのも一苦労だ。例えば、バスケットボールをやろうとすると、人集めも体育館等の確保も大変。せっかく集まれても、やりたい場所や時間帯は希望者が多く、押さえるのが難しい。一つ一つは地味なハードルでも、重なると大きな障害になる。いきおい、個人単位で通えるジムやジョギングなどに、できるものは限られてしまう。

「健康的に過ごしたい」「スポーツを気軽に楽しみたい」というニーズはあるのに、大人だけエアポケットに落ちたような状態になっているわけだ。

年齢を問わずに「するスポーツ」が地域に根づく欧米の国々と異なり、学生時代を終えると、生活スタイルにマッチした「するスポーツ」の場がまだまだ不足気味な日本社会。そんな未成熟な大人の「するスポーツ」の推進主体の一つとして、私が期待するのが鉄道会社だ。

鉄道会社は昭和の時代から関東でも関西、九州でもプロ野球の球団を持ち、沿線の街づくりや活性化につなげた歴史を持つ。これは海外のプロスポーツには見られない、日本独特の「企業によるスポーツの活用」の先駆けといえよう。駅や商業施設を中心とする人が集まる「場」を沿線に持ち、かつ昭和の時代からスポーツを活用してきた鉄道会社は、本来は国や自治体といった公的機関が担うべき「するスポーツ」の推進役として打ってつけのように思える。

ただし、沿線の奥へ奥へと新興住宅地を開発し、駅前にはショッピングモールをつくり、そこから大量の通勤客を朝晩に運ぶという従来のモデルの中で「するスポーツ」の未来を考えているわけではない。

そういう昭和から平成にかけての街づくりは、いわゆる居住人口の「ドーナツ化現象」をあちこちに生んだ。当時は選択肢がそれしかないと思えたが、人口減社会の到来は、人の流れの都心回帰やニュータウンの住民の高齢化といったひずみをもたらすようになった。

鉄道が結ぶ「人とつながる」

ちまたで言われているように「人生100年時代」が本当に来るのであれば、「するスポーツ」は住民の高齢化や高齢者の孤立といった社会課題を解決する、一つの糸口になる可能性があると思うのである。

鉄道ならば「この駅にはモールがあって便利です」というより、「この沿線にいくとスポーツで健康になれますよ」「スポーツで人とつながれますよ」という方が価値のある時代が来るのではないかと。

通勤客やイベント観戦に訪れるお客さんを乗せて運ぶことに加え、スポーツをすることで仲間がつくれる、健康寿命を延ばせる、生きがい、学び直しの機会を得られるとなったら沿線の魅力はもっと輝くというか。

「するスポーツ」の推進となると、広大なスポーツ施設の整備が不可欠で、それをできるのは公的機関だけだと思うかもしれないが、スポーツをするといって、必ずしも広い場所である必要はない。競技団体系の人はすぐに本格志向になってしまうけれど、柔軟な発想で競技の姿形を変えていってもいいだろう。フットサルはその好例で、サッカーよりはるかに省スペース・少人数でやれることで競技人口も施設の数も増やすことができ、民間企業も推進の一翼を担った。

大切なことは、ルールをフレキシブルに、どこでも楽しめるようにして、「するスポーツ」の選択肢を大人に提供できるようにすることである。それであれば民間企業が推進主体となる余地もあるだろう。

企業によるスポーツ活用という観点からみても、単に商品を売るためならネット広告を出した方が効果的という時代である。スポーツの活用方法も、広告価値のみならずスポーツの多面的な価値を生かすべく、事後のアクティベーション活動に力を入れるのが協賛においても主流になっている。この点からも、広告宣伝が主たる効果となる「みるスポーツ(プロスポーツ)」だけではなく「するスポーツ」も、鉄道会社を含めた企業が活用するというのは時流に沿っているのではないだろうか。

サポーターが歩くと特急が走る

そんな時代の流れの中でスタートした先駆的な取り組みとも言えるのが、沿線の様々なステークホルダーと共創しながら社会課題解決や街づくりを推進する、小田急電鉄の「OSEC(Odakyu Sports Entertainment Contents)100」である。活動の第1弾として、以前からスポンサードしているJリーグのFC町田ゼルビアと共創し、今年2月に「特急ロマンスカー・ゼルビア号」をホームスタジアム最寄り駅の鶴川と新宿間で走らせた。75組150人のサポーターとポポビッチ監督、選手を乗せて。

この企画が実現したのは、同クラブが昨年9月に導入したスマートフォン向けアプリ「ARUCLUB MACHIDA(アルクラブ マチダ)」と紐づいていたからだ。ホームゲーム開催日、鶴川駅からスタジアムまでの5キロの道のりを歩いていくと、アプリが万歩計代わりになって歩数がカウントされる。そして全ユーザーの歩数の合計が1000万歩に達すれば、特別仕様のロマンスカーを走らせることになっていた。

歩く人を増やすことで、スタジアムにつながる道路の渋滞緩和や二酸化炭素(CO2)削減につなげつつ、サポーターの健康増進も図る。本来なら、するスポーツの場を広げていくのは国やスポーツ庁が音頭をとってやるようなことかもしれないが、こうやって民間でやると、人を集めるのもスポーツをするのも楽しくプロデュースできる。

大人の「するスポーツ」を、公的機関だけではなく民間企業の力で推進する。しかもそれを1拠点だけではなく沿線という形で「面展開」が可能な鉄道会社が推進する。そこに、企業とスポーツが密接に関わってきた「企業スポーツ文化」の日本ならではの、世界でもユニークなモデルになり得る可能性を感じる。

新型コロナウイルスの影響で在宅勤務をする人が増えているという。そういう働き方はこの先、どんどん一般的になっていくことも予想される。

家にいても何でもできる社会になっていくと、移動にも動機がいる時代になるのだろう。その動機にスポーツは十分になり得ると思う。スポーツイベントを「見る」ために加え、スポーツを「する」ためにも移動する。指一本で何でもできるようになればなるほど、ヒューマンなこと、他者とのつながりを求めて、人は移動しようとするのではないか。

そんなふうに考えると、スポーツと人と鉄道、駅、沿線の結びつきは、これから、深まることはあっても、浅くなることはないと思うのである。

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