経団連、女性副会長の起用見送り 三井物産社長ら内定
経団連の中西宏明会長は9日、新任の副会長人事を発表した。みずほフィナンシャルグループの佐藤康博会長(67)、三井不動産の菰田正信社長(65)、三井住友フィナンシャルグループの太田純社長(62)、三井物産の安永竜夫社長(59)を内定した。新たな布陣でデジタル革新を推進していくが、多様性の象徴として検討してきた女性副会長の起用は見送った。
4氏は6月2日の定時総会で正式に就任する。任期は2期4年となる。
新体制では、昨年副会長に就いた三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の平野信行会長(68)を含めメガ3行がそろう。先端技術を生かして社会の課題を解決する「ソサエティー5.0」の実現に向けて、金融とIT(情報技術)の融合(フィンテック)に関する知見などを生かす狙いがある。
ただ大企業の男性経営者という点では、目新しさに欠ける。とりわけ歴代初となる女性副会長の誕生も注目されたが、今回も見送りとなった。
背景には、女性経営者の人数そのものが少ないという現実がある。政府は2020年までに上場企業役員の女性比率を10%まで高める目標を掲げたが、19年7月時点で5.2%にとどまる。2~4割に及ぶ米欧に大きく見劣りする。中西氏も9日の記者会見で「もう少し多様化を進めていきたいが、女性などは候補者が少ない」とこぼした。
経団連活動には企業側に多額の経費がかかるとされる。ある副会長企業の関係者は「寄付金や出張費なども含めて年3000万円かかる」と明かす。グローバル化やデジタル化など事業環境がめまぐるしく変わるなか、こうした経費に株主の理解が得られにくい面もある。
行動面での制約を懸念する声もあるという。例えば就職活動に関するルールだ。ルールづくりの役割は経団連から政府に移ったが、政府は経団連などに順守を求めている。ルールそのものが形骸化しても、経済界の模範として幹部企業に向けられる視線は厳しい。
経団連は新たな審議員会副議長の人事も決めた。6月に副会長を任期満了で退任する三菱商事の小林健会長(71)ら8氏を内定した。副議長にはこれまで2人の女性が就任したが、ヴェオリア・ジャパンの野田由美子社長(60)とコングレの武内紀子社長(56)が新たに就く。またミドリムシの研究を手掛けるベンチャー、ユーグレナの出雲充社長(40)は副議長としては歴代最年少の就任となる。