2年目オリックス中川 「2番三塁」定着で飛躍期す
オリックス・中川圭太(23)にとって、2019年は波乱のプロ1年目だった。東洋大からドラフト7位で入団したが、自らが卒業した翌年に大阪・PL学園高が休部したことで、話題は「PL最後の戦士」ばかり。そこから実力で第一線に躍り出るまでの軌跡を振り返る。
▼プロ入り ドラフト1位は天理高の太田椋。2位は亜大捕手の頓宮裕真だが三塁へ転向。東洋大からはソフトバンク1位・甲斐野央、DeNA1位・上茶谷大河、中日2位・梅津晃大の3投手が入団。大学出の1位なら契約金1億円、年俸1500万円が相場だが、7位の中川は2500万円、700万円(金額は推定、以下同じ)だった。
▼開幕 2軍からスタート。4月20日に1軍登録になり、閉幕まで2軍落ちなしの111試合出場。頓宮は三塁転向に失敗して捕手へ復帰した。
▼ポジション 本職は二塁だが、一番多く守ったのは外野、次いで一塁、三塁。シーズン通して無失策だったが、「記録に残らぬミスはあった」と本人。
▼高打率 勝負強い広角打法は厚い信頼を呼ぶ。セ・パ交流戦では初見参投手の球も見事に打ち、打率3割8分6厘で新人初の交流戦首位打者に輝いた。
▼主軸に 6月下旬の西武戦など4試合で4番にすわった。物おじした様子は全くなし。8、9番を除く全打順と代打、DHを経験した。
▼コンスタント チームで100試合以上出た5人の中で、吉田正尚に次ぐ打率2割8分8厘をマークした。規定打席に47不足したため、打撃30傑に名前は出なかった。
▼年俸 700万円から2800万円になった。異例の大幅アップだが、甲斐野、上茶谷の新年俸にはまだ及ばない。
キャンプ前の自主トレは一人で続けた。他球団の選手も交えてグループでやるのが流行だが、それだと「他人頼りになる」と、妥協しない姿勢を貫いた。
だが、孤高の人ではない。中学、高校、大学のすべてで主将を務めて人望は厚い。PL学園野球部が廃部騒動に揺れたときは、実質的に監督不在だったチームで代理監督役も経験した。
昨季のオリックスには故障者が多く、中川は便利屋のように使われた。大リーガーのアダム・ジョーンズを獲得した今季は、レギュラー固定化の方向へ向かうと見られる。
その一環として、西村徳文監督は「2番、三塁中川」の攻撃的構想を抱いている。中川にとっては願ってもないこと。「シーズンを通して調子の波をなくし、1年目よりいい成績を残したい」と意気盛んだ。
(スポーツライター 浜田 昭八)