英シティー、新型コロナ対策広がる 金融機能維持へ
【ロンドン=篠崎健太】新型コロナウイルスの感染者が英国でも増え続けるなか、ロンドンの金融街シティーが金融機能を維持するための対策を急いでいる。取引の拠点が閉鎖されるような事態に備え、バックアップ施設の稼働を訓練したり、在宅でも業務を可能にしたりする動きが広がってきた。国際金融センターとしての機能に支障が出ないよう、当局も神経をとがらせている。
世界最大級の再保険市場を運営するロイズ保険組合は4日、事業継続策を説明する従業員向けの通知を公表した。シティー中心部の本社ビルでは日々、ブローカーなどの相対取引が行われている。新型コロナで建物が使用不能になった場合に備え、電子基盤で取引を続けられる仕組みが整っていると説明した。
同社では香港やシンガポール拠点は2日から通常の営業体制に戻った。感染拡大が続くイタリアでは従業員の約3分の1だけを出勤させ、残りは在宅勤務とする体制を敷いているという。端末は毎日、自宅に持ち帰るよう呼びかけている。
金融機関では従業員の勤務体系の分散や、拠点が機能不全になった場合の業務継続体制の確認といった動きが出ている。ブルームバーグ通信によると、米ゴールドマン・サックスはロンドン南部クロイドンのバックアップ施設の試験を行い、万が一の場合もトレーディングなどを続けられるよう準備している。
英金融監督当局の金融行為監督機構(FCA)は4日、新型コロナをめぐり金融業界やイングランド銀行(中央銀行)などと緊密に連携、対応しているとの声明を出した。金融機関は規制に基づく取引報告が義務付けられているが、必要な基準を満たしていれば、バックアップ施設や自宅などから行っても問題としない方針を示した。
英メディアによると英国では4日、新たに36人の新型コロナ感染が確認され、感染者数は計87人に膨らんだ。1日あたりの新規確認数としては過去最大となり、急拡大に懸念が強まっている。
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