トランプ氏、経済に打撃警戒 新型コロナ 再選への影響懸念
「準備は完璧」強調
【ワシントン=永沢毅】トランプ米大統領は26日、新型コロナウイルスへの対応を巡って記者会見し「どのような事態にも完璧に準備ができている」と述べ、対策に万全を期すと強調した。再選をめざす11月の大統領選への影響を警戒して下落が続く米株式市場の動揺を鎮める狙いがある。だが、同日には海外渡航歴のない米国人の発症が新たに明らかになった。封じ込めに成功するかは見通せない。
「米国人へのリスクは極めて低いままだ」。トランプ氏はホワイトハウスでの会見でこう力説した。米政権で陣頭指揮をとる役回りをアザー厚生長官からペンス副大統領に事実上格上げした。渡航制限を中国以外に広げる可能性も排除しないとし、あらゆる対策をとる姿勢を訴えた。
トランプ氏は同日午前に訪問先のインドから戻ったばかりだ。インドからも「米国ではうまく制御できている。マーケットも良くなり始めたようだ!」などとツイッターに書き込んでいたが、26日にペンス氏らを従えてわざわざ会見を開いたことに、その危機感がうかがえる。会見では表向き強気の姿勢を示していたトランプ氏。だが、米政府関係者によると本音ではいらだちを深めているという。
最大の原因は、大統領選への影響だ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは新型コロナウイルスによる影響が、米国の2020年1~3月期の国内総生産(GDP)を0.5%未満押し下げる要因となるとの見方を伝えている。ダウ工業株平均も続落しており、座視したままでは実体経済にまで打撃を与えかねない情勢だった。好調な経済と株価は、トランプ氏がかねて政権の成果として誇ってきたものだ。
野党の民主党が求める新型コロナ対策の予算措置の拡大にも「適切ならいくらでも準備する」と応じる方針を示した。民主からは初動が遅いとの批判がでていた。
「彼はこの問題に懸命に取り組んでいる」。トランプ氏は会見で、対応の不手際が指摘される中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の対応をこう評価した。ただ、トランプ氏がかねて「習主席はとても困難な状況で素晴らしい仕事をしている」などと称賛してきたのも、中国が対米輸入を大幅に増やす米中貿易合意の第1段階の着実な履行を促す狙いがある。
米国は米国人の中国全土への渡航の警戒レベルを4段階で最も高い水準に引き上げるなど段階的に対策を強化してきた。しかし、中国の王毅(ワン・イー)外相はこれらの措置を批判し「第1段階合意の履行に困難がでている」とけん制している。
ただ、米疾病対策センター(CDC)は26日、西部カリフォルニア州で海外への渡航歴がなく、感染者との接触も未確認にもかかわらず感染した事例があったと明らかにした。CDCは米国でも地域レベルの感染拡大がおきるリスクを指摘しており、懸念したとおり感染が広がる恐れがでている。
危機対応にしくじれば選挙に打撃を与えるのは歴史が教える。ブッシュ(子)政権は2005年に大型ハリケーン「カトリーナ」への対応をしくじり、後の中間選挙で大敗を喫した。
ドナルド・トランプ元アメリカ大統領に関する最新ニュースを紹介します。11月の米大統領選挙で共和党の候補者として、バイデン大統領と再び対決します。「もしトラ」の世界はどうなるのか、など解説します。