「大西洋同盟の死は誇張」 米国務長官、独仏に反論
ミュンヘン安保会議で
【ミュンヘン=石川潤】独南部で開かれているミュンヘン安全保障会議で15日、ポンペオ米国務長官が講演し「大西洋同盟の死というのはひどい誇張だ」と述べ、米国第一主義への懸念を強めるドイツやフランスに強く反論した。今回の会議のテーマは「消える西側」だが、ポンペオ氏は「西側は勝っている」と繰り返し、欧州からの懸念をはねつけた。
欧州では、中距離核戦力(INF)全廃条約やイラン核合意などをほごにした米国への不満が強まっている。これまでマクロン仏大統領が「北大西洋条約機構(NATO)は脳死状態」と批判。シュタインマイヤー独大統領も14日の開幕講演で「米国は現政権のもと、国際社会の理念を退けている」と語っていた。
ポンペオ氏は米国が国際社会を拒んだことはないとし、欧州と米国は自由主義的な価値観で今でも最も魅力的だと主張した。「消える西側」という言葉は理解できないとし、他国の主権を尊重していないのはロシアや中国、イランだと述べた。
そのうえでポンペオ氏は中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は「トロイの木馬だ」と訴えた。巨大な木馬の中に敵の兵士が潜んで城内に入り、内側から攻め滅ぼされた古代ギリシャの故事を引用してファーウェイ製品のリスクを指摘。欧州の次世代通信網(5G)の整備から同社の排除が進まない状況への不満を示した。
独ロのガスパイプライン計画(ノルドストリーム2)に反対する立場も改めて表明した。
ポンペオ氏のすぐ後に登壇したマクロン仏大統領は、かつて普遍的だった西側の価値観が「弱まっている」と語った。米国の姿勢が変化するなか、欧州は防衛などの分野でより協力を深めていかなければならないとの考えを強調し、会場から大きな拍手を浴びた。