英、10~12月ゼロ成長 EU離脱不安で消費失速
【ロンドン=篠崎健太】英国の政府統計局が11日発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比横ばいだった。7~9月期の0.5%増から減速した。昨年12月の下院総選挙など欧州連合(EU)離脱をめぐり政局が揺れるなか、先行き不透明感から個人消費が失速したためだ。企業投資も振るわなかった。
成長率を押し下げたのは、GDPの6割強を占める個人消費の伸びの鈍化だ。0.1%増と前期より0.3ポイント減速し、15年10~12月期以来4年ぶりの低さになった。
19年10~12月はジョンソン政権がEUとまとめた新離脱案の議会下院でのスピード審議否決や解散総選挙など、EU離脱をめぐり政局が大きく揺れた。景気の先行き不安から、消費者の間で支出を手控える動きが広がった。企業投資も1.0%減と4四半期ぶりにマイナスとなった。
GDPを業種別の生産からみると、製造業は1.1%減と3期連続で減少した。サービス業は0.1%増と、前期の0.5%増から鈍化した。
前年同期比の伸び率は1.1%増と、7~9月期より0.1ポイント縮んだ。18年1~3月期以来の低さだった。19年暦年のGDPは前年比1.4%増(18年は1.3%増)となった。
20年1~3月期の成長率は持ち直すとの予想が多い。「移行期間」のあるEU離脱が1月末に実現し、目先の混乱が避けられたことで、企業の景況感悪化に歯止めがかかっているためだ。英IHSマークイットが集計した1月の英総合購買担当者景気指数(PMI)は、前月比4.0ポイント高い53.3と、18年9月以来の水準を回復した。
IHSマークイットのティム・ムーア氏は「総選挙以降、政治の不透明さという逆風が和らぎ、英経済は上向いている」と指摘した。同社は1~3月期の英GDPは前期比0.2%程度増加すると予想している。
ただ、ジョンソン政権は20年末で終わるEU離脱の移行期間を延長せず、今後の通商協議でも妥協しない姿勢を鮮明にしている。EUとの協議の行方に暗雲が広がれば、再び景況感が悪化するリスクを抱えている。