光る安定感、崩れぬマキロイ 再び世界ランク1位に
ゴルフジャーナリスト ジム・マッケイブ
男子ゴルフのロリー・マキロイ(英国)は今季、米ツアーに3試合出場し、優勝1回、3位タイが2回と、好調なスタートを切っている。
1月下旬のファーマーズ・インシュアランス・オープンで3位タイになったのは記憶に新しいが、いつ勝ったのか?といわれれば、確かに覚えていない人もいるかもしれない。彼にとっての今季初戦は昨年10月24日から日本で行われたZOZOチャンピオンシップだった。その翌週、世界ゴルフ選手権の一つ、上海で行われたHSBCチャンピオンズでザンダー・シャウフェレ(米国)とのプレーオフを制した。
米ツアーのカレンダーが秋に始まっていることによる勘違いは米国でもあるが、9~10月に開幕し、8~9月に終わるという日程も今年で7年目。いまひとつ浸透していないのは、認めなければならないところか。
いずれにしても、マキロイが安定した成績を残していることだけは確かだが、このところ本当に崩れない。
2018~19年シーズン以降でみると、3日現在、マキロイは米ツアーに22試合に出場し、4勝。トップ5は11回で、トップ10は17回。予選落ちはわずかに2回で、予選落ち以外で30位以内に入れなかったのは1回だけ。欧州ツアーの試合をみても、昨年夏以降、オメガ・ヨーロピアン・マスターズ(8月29日~9月1日)で2位タイ、BMW PGA選手権(9月19~22日)で9位タイ、DPワールドツアー選手権ドバイ(11月21~24日)で4位と、着実に結果を残している。
ただ、そんなマキロイも四大大会だけは、14年の全米プロ選手権を最後に勝利から見放されており、その14年は、わずか1カ月の間に全英オープンと全米プロ選手権を立て続けに制したが、それから随分と時間がたってしまった。
もっとも、すでにメジャー4勝で、四大大会の通算勝利数で彼より上にいるのは19人のみ。現役では、15勝のタイガー・ウッズと5勝のフィル・ミケルソン(ともに米国)の2人だけでもある。また、メジャーのタイトルを手にできていないとはいえ、昨年3月には、第5のメジャーとも呼ばれるプレーヤーズ選手権を制しており、ビッグトーナメントでの勝負強さも証明している。
あとは、ちょっとした運だろう。実力を疑う声はない。
ちなみに米国人選手の中にも、そのちょっとした運に見放されている者がいる。
今、米国のトッププロといえば、シャウフェレ、トニー・フィナウ、ブルックス・ケプカ、ダスティン・ジョンソン、ジャスティン・トーマス、ジョーダン・スピースらだが、後者の4人でメジャー9勝を挙げている。シャウフェレとフィナウは未勝利だが、かといって彼らを侮ることはできない。シャウフェレは過去3年の全米オープンの結果が5位タイ、6位タイ、3位タイ。フィナウは、過去8回の四大大会でトップ10が5回。彼らもまた安定した結果を残しているのだ。
また、19年のマスターズ・トーナメントは、ウッズが08年の全米オープン以来、15度目のメジャー勝利を飾った大会と記憶されているが、シャウフェレは1打差の2位タイ。フィナウは2打差の5位タイだった。そのわずかな差が、勝者と敗者を分けるのは常だが、彼らはもう、そこまで迫っている。
マキロイもなぜか、グリーンジャケットだけはまだ手にしていない。しかし、昨年こそ21位タイだったが、その前の5年は14年から順に8位タイ、4位、10位タイ、7位タイ、5位タイと、すべて10位以内。この流れなら、いつ生涯グランドスラムを達成してもおかしくない。いや、今の崩れないゴルフを続けられれば、むしろ、その可能性は高い。
さて、そうした長く安定した成績が評価される世界ランキングにおいて来週、2位のマキロイがトップに返り咲くことが決定的となった。彼が着実にポイントを積み重ねているのとは対照的に、昨シーズン終了後に左膝を手術し、しばらく大会から遠ざかった同ランク1位のケプカは先日、欧州ツアーで復帰したものの結果を残せず、ポイントが減る一方となっていた。
世界ランクは、過去2年(104週)の戦績がベースだが、古い成績ほどポイント価値が下がっていく。今週のAT&Tペブルビーチ・プロアマにはケプカ、マキロイとも不参加で、いずれもポイントを稼ぐことはできないが、ケプカの場合、失うポイントがマキロイよりも多いことから、こうした逆転現象がおきた。
派手なメジャー大会の実績に比べ、安定感は評価されにくいが、その安定感でマキロイは、15年9月以来のトップに立とうとしている。