「公正な競争」維持を最優先 EUが英国との交渉方針
【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)の欧州委員会は3日、EUを離脱した英国との自由貿易協定(FTA)など将来関係を巡る交渉方針を発表した。英国が関税ゼロの継続を求めるなか、一方的な規制緩和などで競争力を不当に高めることがないように「公正な競争環境」の確保を最重視する。EUのルールに合わせないのならば、英側に関税ゼロなどの通商条件は認めない姿勢を鮮明にした。
英国との交渉を取り仕切るEUのバルニエ首席交渉官が公表した。欧州委は月内に加盟国の承認を得て3月から交渉に入る。今回の方針は貿易のほか、司法協力、外交、安全保障、英国のEU事業への参加など幅広い分野を網羅した。12分野の協議が同時並行で実施される。
「競争は公平でなければならない。公正な競争環境の保障が必要だ」。バルニエ氏は記者会見で「レベル・プレイング・フィールド」(公正な競争環境)という言葉を繰り返して力説した。
英国がEUを抜けて「第三国」となった今、英国とEU加盟国の間では競争が発生する。これまではEUの厳しい基準に合わせていた英国が規制や補助金制度を独自に緩和すれば加盟国が不利になるとの警戒感がある。
マクロン仏大統領は英離脱直後、将来の関係を巡る交渉について「欧州市場へのアクセスのしやすさは、EU規則をどの程度受け入れられるかにかかっている」と英国にクギを刺した。関税ゼロなど高い野心のFTAを望むならば、英側はEU基準を受け入れる必要があるという主張だ。だが英側はEUのルールに縛られることはないとの姿勢を鮮明にしており、交渉は難航しそうだ。
ジョンソン首相は年内の合意を目指している。EUは包括合意には時間が短すぎるとの立場は崩していない。EUは英側水域での漁業の継続や安保面の協力など重要分野での合意を優先し、残りは2021年以降に先送りすることも視野に入れる。バルニエ氏は記者会見で「すべての関係者は年末までに合意を得られないことへの準備をする必要がある」と交渉は楽観できないとの見方を示した。