催し多彩な横浜ホースメッセ 高まる馬への興味
開場と同時に体験乗馬には長い行列ができ、ポニーとの触れ合いに家族連れが集まる。冬晴れの1月16日、1月の恒例行事となったホースメッセが、横浜で始まった。
かつての港町の繁栄を現代に伝える海辺のレトロな赤レンガ倉庫内に展示・販売スペースができ、隣接する赤レンガパークには特設の馬場が。徒歩5分ほどの第2会場、ワールドポーターズにもセミナー会場が設けられた。
初日、第2会場のオープニングは日本中央競馬会(JRA)栗東トレーニングセンター所属の角居勝彦調教師、カウボーイアップランチ(宮崎県)代表でホースクリニシャンの宮田朋典氏、岡山乗馬倶楽部グループ代表の西崎純郎氏による講座「グラウンドワークのイロハ」。
現代日本で、馬は競走用がほとんど。競走馬としての役目を終えた馬たちのいわゆる「セカンドキャリア」の話を挟みながら、馬をはじめとする動物のウェルフェア(福祉)とは、速く走ることに専念していた馬が人間と仲良くしていくようにするにはどうすればよいのか、などなど。有名種牡馬のしつけなどにも携わってきた宮田氏を進行役に、それぞれの現場の興味深いエピソードが、短い休憩と質疑応答を挟んで約2時間、披露された。
有料の講座の会場を埋めた受講者の大半は乗馬関係者と思われ、多くは女性。以前は馬関係の集会やイベントの出席者は大半が男性であるのが当たり前という感覚で見てきたせいか、新鮮に感じられた。
今回、一番楽しみにしていたのが18日の「Show up Party」。当日朝から続いた雪交じりの雨で、特設馬場で予定されていた全国流鏑馬(やぶさめ)女子部の弓使いの型の披露とカントリーダンスチームによるカントリーラインダンスは、赤レンガ倉庫3階に場所を移して行われた。会場は狭くなったが、楽しさは期待通り。
古式ゆかしい装束に身を包み、馬から降りた状態で流鏑馬の様々な弓使いの型が解説とともに集団で整然と披露された。それに続く米国西部の陽気なパーティーを思わせるカントリーラインダンスのフィナーレは、流鏑馬女子部や観客も加わって会場からあふれんばかりの大きなウエーブとなった。
今回の流鏑馬は馬から降りての型の披露だけだったが、3月15日に東京都世田谷区の二子玉川公園近接の多摩川河川敷特設会場で行われる「全国スポーツ流鏑馬第1回世田谷大会」では、疾走する馬から矢が放たれる迫力十分の流鏑馬競技が個人戦、団体戦で行われ、間近で見られる。競技の後はカントリーダンスの披露を挟んで、競技で実際に使われる弓に触れたり、流鏑馬に使用される馬に乗ったりすることもできるという。昨年秋に予定されていながら、台風の影響で順延された今回の催し。多くの方にご覧いただきたい。
最終日1月20日まで、赤レンガ倉庫内では例年どおり各種展示・販売が行われた。今年の展示で目をひいたのは、近づく東京2020に向けた日本財団パラリンピックサポートセンターのブースだった。パラ馬術競技候補選手の紹介のほか、馬術の基本用語解説をパネル展示。19日に特設馬場で無料公開された「豪華絢爛(けんらん)エキシビションショー」では、馬場馬術のエキシビション、総合馬術競技のデモンストレーションなどのほか、パラ馬術競技の紹介もあったという。
販売スペースでは絵画などアートや、馬をデザインした宝飾品に加え、馬具メーカーの展示販売も行われた。バッグなど革製品の世界的高級ブランド「エルメス」の発祥が馬具メーカーであることはよく知られているが、北海道砂川市に本拠を置く日本唯一の馬具総合メーカー「ソメス」は有名騎手も愛用するサドル(鞍=くら)などのほか、バッグや革小物類の展示販売を行っていた。最終日には乗馬用品ブランド各社が参加してのビッグセールが行われた。
このほか、馬ふんでつくった堆肥を使って育てられた野菜やジャムなどを販売するマルシェや、中古馬具の販売など馬を介した循環型社会の提案、引退した馬たちの余生(ハッピーライフ)を考えるNPO法人引退馬協会の取り組みの紹介、乗馬セラピーや日本在来馬の保護活動の紹介など盛りだくさん。19日午後には展示・販売各社、各団体や有志の協賛で在来馬保護のためのチャリティーオークションも開催。連日、特設馬場での体験乗馬やホースショーをはじめ、馬の扱い方や騎乗者のエクササイズなどのセミナー、様々な講座、そしてトークショーが各会場で朝から夕方まで繰り広げられた。
残念ながら4年間続いてきたホースメッセは来年は休止し、次回の第5回は2年後に開催予定。馬に関する知識と興味がこれほど高まる場は他にはない。十分な準備期間を経て、次回がより多くの人が集まる充実したイベントとなることを期待したい。
(ラジオNIKKEIアナウンサー 佐藤泉)