米フェイスブック幹部、「リブラ」の早期開始に自信
【ダボス(スイス東部)=奥平和行】米フェイスブックでデジタル通貨「リブラ」の事業責任者を務めるデビッド・マーカス氏は23日、早期の事業開始について「楽観している」と述べた。同社は2019年6月にリブラの構想を発表したが、各国の金融当局などからマネーロンダリング(資金洗浄)などの恐れがあるとの指摘を受けて計画を延期していた。
世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)でデジタル通貨をテーマにした討論会に参加し、出席者の質問に答えた。
フェイスブックは当初、20年前半にリブラのサービスを始めるとの考えを示していた。マーカス氏は「発表時にできあがった計画があるような誤解を受けた」と説明。「実際は議論を始めることを考えており、そのようになっている」と説明した。1~2年内の開始について問われると「近い将来に始めたい」と答えた。
討論会には国際決済銀行(BIS)の幹部などが参加し、デジタル通貨の可能性と課題について議論した。参加者の多くはデジタル通貨が国際送金のコスト削減や、金融サービスの提供対象先を広げるといった点を評価する一方、資金洗浄などのリスクを指摘する声が上がった。官民共同で取り組むことや、複数のデジタル通貨の間で互換性を保つことの重要性を指摘した参加者も多かった。
リブラを巡っては20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が19年10月に合意文書をまとめ「深刻なリスク」があると指摘した。マーカス氏はリブラに対する懸念について「合理的だ」との考え方を示した。昨年10月にリブラ協会を設立したことにより「参画企業の意見を集約し、懸念にこたえやすくなっている」とも説明した。
ただ、リブラ協会をめぐっては米マスターカードなど金融・決済企業を中心とする7社が発足直前に離脱し、今月に入り英通信大手のボーダフォン・グループも脱会したことが明らかになっている。日銀や欧州中央銀行(ECB)などが中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)の発行を視野に新組織をつくることを決めており、リブラは計画の大幅な見直しを迫られるとの見方も広がっている。
ダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)のテーマや日本から参加する企業トップの活動など、最新のニュースをお届けします。
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