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物欲薄れ、変わる野球選手 「裸一貫から」は不変

編集委員 篠山正幸

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「ハングリー精神」という言葉が、ほぼ死語になった今、プロ野球選手は何に駆り立てられて、つらい練習に耐えるのか。いい車に乗りたい、うまいものを食べたいという「昭和的」なやる気の源に取って代わるものはなんだろう。

ドラフト1位の163キロ右腕、佐々木朗希(岩手・大船渡高)ら、ロッテの7新人の入団発表の席で、試しに聞いてみた。

もし、自分の力で年俸1億円を稼げるようになったとき、したいこと、買いたいものは何か?

貯金、格好いい車、大きい家・風呂

それぞれに味のある答えが返ってきた。

「貯金したい」(佐々木朗)

「車が好きなので、何台か買い替えてみたい」(佐藤都志也=としや=東洋大)

「自分も車が好きで、格好いい車を買いたい」(高部瑛斗=あきと=国士舘大)

「そんなに高額なものではないが、靴が好きなので、靴をいろいろそろえてみたい」(横山陸人=千葉・専大松戸高)

「大きい家に住みたい」(福田光輝=こうき=法大)

「車と時計を買ってみたい」(本前郁也=ふみや=北翔大)

「僕は大きいお風呂が好き」(植田将太=慶大)

車や時計が出てきて、意外な感じもした。しかし、これは質問をする際に「今の選手はあまり物欲がないので聞いてみるのだが」と前置きをしたために、選手たちが気を使って、あえてモノに触れてくれたのかもしれなかった。質問の仕方が悪かったかもしれないが、人々がひたすら物質的な豊かさを求めた昭和の世の中に漬かってきた世代には、大きな家や大きな風呂を含め、親近感のわく答えとなった。

昔の野球選手の欲望はわかりやすかった。戦後のモノのない時代はいいものをたらふく食いたいというのが、第一だった。

1954年、福岡・東筑高から西鉄(現西武)に入団した仰木彬選手はキャンプの朝食で、漬物だけをおかずにご飯を19杯食べて、先輩選手を驚かせたという。いつでも誰でも、白いご飯を満足いくまで食べられる時代はもう少し先だった。

その7年後の61年にブリヂストンタイヤから中日入りした権藤博投手のモチベーションの一つになっていたのは好きなだけ肉を食べたい、というものだった。社会人時代に九州の先輩である西鉄の稲尾和久投手が分厚い財布をみせて、ステーキをおごってくれた。「自分も稲尾さんのようになりたい」と思ったという。

かつてのオールスターなどの敢闘選手への景品が鶏やブタだったように、食べ物という現物がありがたい時代があった。高度成長期を経ていくなか、家、車、そして異性にモテたいといった気持ちを含め、若者の願望は大体相場が決まっていて、供給者側からみると、商品開発から広告宣伝まで、ターゲットを絞りやすかった時代でもある。

時代が下り、衣食住がほぼ満ち足りた今、若い人に対して、君が欲しいものはこれだろう?と言って当てることは不可能に近い。若い人の車離れがいわれて久しく、これはモノ離れの象徴でもあるのだろう。

物質的な恩恵、つまり「ハード面」より、精神的な充実感や達成感、つまり「ソフト面」に喜びを見いだす世代的な特徴は、当然野球界にも表れるはず。その代表として大谷翔平(日本ハム―エンゼルス)が挙げられるかもしれない。

大谷が口にする願望といえば、二刀流への意欲と「世界一の選手になりたい」という形而上的なものが多く、趣味はトレーニング、といえそうなストイックな感じがうかがえる。もっとも本人にとって、その生活スタイルは当たり前のことで、ストイックという認識すらないに違いない。

「貯金をしたい」と話した佐々木朗のやる気の源も、一緒に野球をやってきた仲間への感謝、プロで活躍してその恩に報いたい、といった「ソフト面」にあるらしい。

寮に持ち込んだ一番のお宝は仲間の寄せ書きが入った大船渡高のユニホームだった。「小中高と野球をやってきたなかで、たくさんのチームメートに恵まれてここまでこられたと思うので、それを忘れずにいたい」

もちろん、昭和の選手たちも、特に若いころは青年期特有の理想主義があって、大谷が口にするような「自分がどこまでいけるか」という純粋な向上心を持ち合わせていたには違いない。

時代背景の違いによって、選手たちのモチベーションの見え方が異なっているだけかもしれない、という点には留意すべきだろうが、物欲からの解放、という点についてみれば、明らかな変化がみられる。

腕一つの実力社会、結果は努力次第

時代が変わっても、変わらないことが一つある。いつの時代も選手たちは裸一貫からスタートする、ということだ。

佐々木朗の入寮の様子をみた。野球道具や着替えなど、荷物は限られ、球団から配布された写真でも、ガランとした部屋の様子がうかがえるようだった。

ドラフトの上位と下位で、契約金や年俸の差はあるが、ここから先は腕一つ。努力次第でどうにでもなるし、汗を流すことをいとえば沈んでいくだけだ。ここには金の力も、権力も及ばない。その実力社会に、裸一貫でこぎだす若者たちの姿はいつも、すがすがしい。

金さえあれば、世の中のかなりのことはどうにでもなるのだ、とカルロス・ゴーン被告の経費数十億円ともいわれる逃亡劇が、味気ない現実を突きつけてきた折も折。金ではどうにもならない世界があることの救いが、今年は特に身にしみる。

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