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住宅の工業生産時代開く 大和ハウスのパイプハウス

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4兆円企業、大和ハウス工業の起源をたどると「直交クランプ」という握りこぶし大の部品に行き着く。金属板をU字形に曲げ、切れ込みを入れたところに座金とボルトを組み合わせたT字形の金具をはめ込む。ボルトを締めると直交したパイプが簡単に固定できる。創業者の石橋信夫オーナーは1955年4月に会社を創立、同じ月に直交クランプと鉄パイプで作った骨組みに鉄の波板で屋根と壁を張った「パイプハウス」を発売した。

直交クランプを考案したのは大和ハウスの尾本勝信専務。その特許を大和ハウスが買い取った。便利な直交クランプだったが、直径27.2ミリのパイプしか扱えないのが難点。忍史郎技術部長が改良を加え、直径48.6ミリの太いパイプにも対応できる「十字クランプ」を開発、59年に実用新案になった。

パイプハウスは床面積約20平方メートルで約20万円。石橋オーナーは販売先を国鉄(現JR)と定め、東京・丸の内の国鉄本社に飛び込んだ。けんもほろろの対応にたんかを切って席を立ったが、思い直して翌日に再訪問した。国鉄の担当者は態度を変え、担当部局17人への紹介状を書いてくれた。保線区の資材置き場や作業員の休憩所として採用され、約4500ある駅のうち2564駅に数棟ずつパイプハウスを建てる契約を結んだ。

55年6月に築港工場(大阪市港区)が稼働した。約1800平方メートルの土地を有刺鉄線で囲っただけで屋根も無い青空工場。当然だがフォークリフトも無い。長さ5.5メートルの鉄管を担いで、切断し、鉄板をカット、ボルト穴を開けるといった作業を人力でこなした。

創業翌年の56年に入社した石田邦男氏は「鉄管を一度に何本運べるかで競争だった」と話す。施工時はアルバイトの男性と2人で1日半かけて1棟を建てた。石橋オーナーは「1日でやれ」と求めた。石田氏は段取りを工夫し、1日で建てるコツを身につけた。

大阪と東京の大和ハウス本社ビルはいずれも旧国鉄ゆかりの土地を取得し、99年に完成した。石橋信夫記念館の梶本武士館長は石橋オーナーが完成式典で「これで国鉄に恩返しできたな」とつぶやいたのを覚えている。石橋オーナーは国鉄の次に営林署を開拓、木造の造林小屋をパイプハウスに置き換えていった。さらに電電公社(現NTT)も攻略した。

56年に関西電力黒部川第4発電所(黒四、富山県黒部市)工事の作業員宿舎を受注した。63年に完成するまでに171人の殉職者を出す世紀の難工事。現場は秘境でトラックが通れない。重い資材を担ぎ、細い山道を何往復もした社員は「谷底に鉄管を投げ捨てようと思った」という。苦労の末、北アルプスの急斜面に張り付くように建てたパイプハウスは重労働で疲れた作業員を癒やした。

ある日、保津川でアユ釣りをしていた石橋オーナーは大勢の子供が水遊びする様子を見て、「ゆっくり勉強できているのかな」と考えた。すぐ開発担当に「3.3平方メートルあたり4万円以下、3時間で建つ独立の勉強部屋を開発せよ」と命じた。59年、パイプハウスから発展した新製品「ミゼットハウス」が誕生。主要構造材は軽量形鋼に、壁は油を含浸させ加熱処理したハードボードに代わった。大ヒットし、ある家電メーカーが「1億円で買いたい」と申し入れてきた。石橋オーナーは「商品は売るが、アイデアは売らない」と言って断った。ミゼットハウスは徐々に大型化して基幹商品のプレハブ住宅に育ち、住宅の工業生産が幕を開けた。

2019年11月、石田氏は81歳で人生初のホールインワンを果たした。20代でパイプハウスの重い鉄管や資材を担ぎ培った粘り強い足腰がもたらす快挙だった。

(編集委員 竹田忍)

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