改善の提案にポイント 井上
はたらく
電気設備事業などを手がける井上(京都府福知山市)には、社員誰もが会社や地域のために何でも提案できる「iデア提案活動」がある。ユニークなのは提案1件ごとに「GJP(グッジョブポイント)」を与えること。年2回、1ポイント500円をボーナスに加算する。社員から幅広く意見を集め、参加型経営を目指す。
現状や改善方法、効果などを提案書に書いて提出すれば採否や成果にかかわらず、1ポイント付与する。挑戦を重視するからで、内容も「休日出勤の取り扱い改善」から「営業所を子ども110番の家にしたい」などと幅広い。提案書には井上大輔社長がすべて目を通し、予算不足の場合などを除いて経営会議で諮る。
他の業績も反映して優秀な人を表彰する制度もこれとは別にある。
iデア提案活動を導入したのは、2003年に就任した井上社長。従来のトップダウン経営に疑問を感じて10年に「社員が幸せに働ける会社」を目指し、第2の創業を宣言した。iデア提案活動はその一環として14年度に始まった。
同社の社員数は約100人で、18年度の売上高は約32億円。これまで約3700件の提案が集まり、1年で466ポイントを稼いだ社員もいる。ボーナスに20万円以上が上乗せされる計算だ。
業績改善にもつながっている。電気設備資材の卸売りでは配達する場合もあれば、商品を引き取りに来る顧客もいる。「引き取りに来れば缶ジュースを配る」という提案を実行すると、配達が減り全体でコスト削減につながったという。
16年度に始まったのが、社内サイトで感謝を伝え合う「みんなのありがとう(みんあり)」。「顧客のクレームだけではなく、感謝も共有したい」という提案がきっかけで、「足りない在庫を他の営業所が届けてくれてありがとう」という声からは在庫配置が適切ではないという課題が浮かび上がった。
井上社長はiデア提案とみんありで「社内のことが手に取るように分かる」と手応えを感じる。提案数の目標は制度導入時で10年間で5000件。井上社長は「人間も5000カ所を改めたら別人になれる。10年で全く違う会社になろう」と呼びかけ、制度を根付かせてきた。会社がどう生まれ変わるのか。その変身を見れば、働く人の充実度も分かるかもしれない。
(高崎雄太郎)
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