イラン反政府デモ続く 発砲の情報も、国連総長が憂慮
【アブダビ=木寺もも子、ニューヨーク=吉田圭織】イランの首都テヘランで13日、3日目となる反政府デモが起きた。同国の革命防衛隊がウクライナ国際航空の旅客機を誤って撃ち落とし、当初は否定していたことを巡り学生らが「嘘つき」などと批判した。最高指導者のハメネイ師ら指導部の辞任を求める声も上がった。デモ隊への発砲でけが人が出たとの情報もあり、国連のグテレス事務総長は13日、「憂慮すべきだ」と懸念を表明した。
ツイッターなどを通じてみられた映像によると、学生らはテヘラン中心部の広場や路上に集まり「(イラン指導部の)聖職者たちよ、うせろ」などと訴えた。米軍が3日に殺害した革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官の写真を破り捨てる姿もあった。ソレイマニ氏はイランの英雄とされている。
イランのファルス通信は警察が催涙ガスを使ってデモ隊を解散させようとしたと報じた。12日には血を流して倒れる女性の姿もツイッターで拡散した。革命防衛隊に近い武装組織などが発砲したとの情報もあるが、警察幹部は発砲を否定している。
一方、英国政府は13日、駐英のイラン大使を呼び、イランが駐イランの英国大使を11日に一時拘束したことに対して抗議した。ジョンソン首相の報道官は「(外交官の不逮捕特権を定めた)ウィーン条約への重大な違反で、受け入れられない」と述べた。イラン側は英国大使がデモを扇動した疑いがあるとしているが、大使は追悼集会に参加しただけだと否定している。
イランは8日未明、イラクにある米軍駐留拠点2カ所を空爆した。反撃に備えていた同日早朝、ウクライナ機を米軍の巡航ミサイルと誤認し、撃ち落とした。死亡した乗客・乗員176人の大半はイラン人やイラン系カナダ人などだった。
欧米などはイランによる誤射の可能性を指摘していたが、イラン側は当初「真っ赤なウソだ」などとして否定。11日になって初めて誤射を認め、謝罪した。隠蔽の意図はなかったとしている。
3日に米軍がソレイマニ氏をイラクで殺害して以降、米イラン間では軍事的緊張が極度に高まっていた。
国連のグテレス事務総長は13日、「殺傷力のある武力が行使されたとの報道を調査する必要がある」と主張。デモ隊には「言論や平和的な集会の自由がある」との考えも示した。ニューヨークの国連本部での定例会見で報道官が明らかにした。