アラムコが株式追加放出 IPO調達額3.2兆円に
【ドバイ=岐部秀光】サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは12日、国内証券取引所タダウルに株式を追加放出したと発表した。2019年12月の公開で史上最高となった新規株式公開(IPO)によるアラムコの資金調達額は294億ドル(約3兆2千億円)に膨らんだ。
追加放出は、アラムコが引受証券会社とのあいだでむすんだ「グリーン・シュー・オプション」という価格安定のための契約にもとづく。担当金融機関の米ゴールドマンサックスがオプションの権利を行使した。アラムコが公開日の30億株に加え4億5000万株を追加放出し、38億ドルを新規調達した。
サウジはIPOによって得た巨額の資金を、インフラ整備など非石油部門への投資に振り向ける計画。皇太子が旗振り役である「石油にたよらない経済づくり」の改革の資金となる。
アラムコ株は公開当初こそ急騰し、実力者ムハンマド皇太子が主張する時価総額「2兆ドル」を突破したが、その後は米イラン対立をめぐる緊張などから低迷した。危機にともない上昇した原油価格による収益の押し上げよりも、アラムコが抱えるリスクの高まりが市場で強く意識されたからだ。
12日の終値にもとづく時価総額は1兆8500億ドルで、米アップルなどを大幅に上回る「世界最大の価値を持つ企業」の看板は揺らいでいない。ただ、株価はピークに比べると8%安い水準で、皇太子の主張する2兆ドルにも届いていない。