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実は手堅くない送りバント 「損益分岐点」は打率1割

野球データアナリスト 岡田友輔

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初回、先頭打者が出塁して2番打者。ここで送りバントのサインが出れば、解説者は決まってこう言うだろう。「手堅いですね」。しかし統計からみると、これは正確とはいいがたい。

まずは2014~18年の日本のプロ野球(NPB)における「得点期待値」をみてみよう。特定の状況からそのイニングが終わるまでに入った得点の平均を示す。無死一塁の0.804点に対し、1死二塁では0.674点。つまり送りバントを決めて走者を二塁に進めると、期待できる得点は0.13点下がってしまうのだ。

これはアウトが増えることで、2点以上取れる確率が減ってしまうから。無死一塁以外の状況でも、バントが得点期待値を下げるのは変わらない(表参照)。9イニングで得点を最大化するという野球の本質に照らすと、送りバントは有効な戦術とはいいがたい。

では同点の九回裏のような、とにかく1点が欲しい局面ではどうだろうか。特定の状況から少なくとも1点が入る可能性を「得点確率」と呼ぶ。14~18年、NPBの無死一塁からの得点確率は40.2%だった。1死二塁からだと39.4%。無死一塁からの送りバントは、1点を取る確率も下げてしまうことになる。

もっとも表の通り、すべてのバントが無効というわけではない。僅かながら得点確率を上げるバントもあり、それは無死から二塁走者を三塁に進めるとき。無死二塁または無死一、二塁からのバントが決まれば得点確率は2ポイント前後上がる。走者が三塁にいれば外野フライや内野ゴロでも生還できる可能性が生まれるためだ。ただし、走者を三塁に進めても1死からのバントは完全な「悪手」。得点確率を15ポイント近く下げてしまう。

ここでこんな疑問が湧くかもしれない。「こうしたデータはあくまで平均値の話ではないか。選手の打力は千差万別だ。期待できない打者にバントで送らせ、好機で強打者に回すのは理にかなっているのではないか」。これは確かにその通り。無死一塁から投手にバントをさせるのは間違っていない。そこで問題になるのが、バントさせるべき打者とそれ以外の線引きである。バントと強攻の「損益分岐点」はどこにあるのか。

ある打者が強攻した場合、本塁打から併殺打まで様々な結果が起こり得る。同じ単打でも一塁走者が二塁で止まることもあれば、三塁まで進むこともある。それぞれの展開が起こる確率を積み上げ、得点期待値がどのように変化するかを合算すると損益分岐点がみえてくる。

野球アナリストの蛭川皓平氏は著書「セイバーメトリクス入門」の中で18年の菊池涼介(広島)の成績に基づいて算出した結果を紹介している。この年の菊池は打率2割3分3厘、13本塁打、送りバントは30だった。煩雑な数式や詳細は省くが、菊池が無死一塁から強攻する場合、得点期待値は0.807だった。一方、バントをした場合(5回中4回成功と仮定)は0.639。これほど打率が低い打者でも、バントは得点期待値を下げてしまうのだ。

蛭川氏は強攻とバントの損益分岐点を「打率にして1割3厘」と結論づけている。18年のNPBで100打席以上立ち、この数字を下回った野手はいない。このレベルになると、すべての選手が強攻した方がいいということになる。もうお分かりだと思うが、送りバントはかなり非効率な作戦なのである。

割に合わない作戦が「手堅い」と信じられてきた理由は人間心理の不合理に関係していると考えられる。行動経済学の知見によると、人間は手に入るかもしれないものよりも、失うかもしれないものに目が向き、失うことに対して必要以上の嫌悪感を抱く傾向がある。無死一塁から強攻すれば本塁打から併殺打まで振れ幅があるが、人間心理は併殺の回避を優先しやすい。「最悪のシナリオ」を避けられる確率が高いことが、送りバントが過剰評価され続ける一因だろう。

では、送りバントはしないに越したことがないのだろうか。そうとばかりもいいきれないのが、野球の奥深さということになる。攻撃側が強攻一辺倒になれば、守備側は深いポジションを取るようになる。こうした場面で意表を突くバントをすれば、内野安打や敵失につながる可能性が増す。反対にバントと見せかけて相手に前進守備を取らせたうえで強攻すれば、ヒットが出やすくなる。

要約すると、送りバントは極端に打力の乏しい打者を除けば合理的とも手堅いともいいがたい。攻撃の選択肢の上位にくるべきものではないが、使いようによっては駆け引きの材料となって野球を面白くする。それは攻撃の定番ではなく、奇策というべきものなのだ。

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