20年の工作機械受注1兆2000億円 横ばい見通し
日本工作機械工業会(日工会、東京・港)の飯村幸生会長は9日、2020年の工作機械の年間受注額が19年実績(推定)に比べて横ばいの1兆2000億円になる見通しを示した。米中貿易摩擦が影を落とし、多くの業種や地域で設備投資が落ち込んだものの、20年前半に受注が上向き一段の底割れは避けられると見込む。
飯村会長(東芝機械会長)は都内で開かれた賀詞交換会で、「外需は軟調に推移するが、中国経済の依存が少ない地域から受注が持ち直すとみている。今年前半には底を打ち、緩やかに反転すると期待している」と展望を述べた。
19年は工作機械業界にとって厳しい一年だった。好不況の目安とされる月1千億円の受注ラインを6月に割り込むと、11月に6年7カ月ぶりに850億円を下回る水準まで落ち込んだ。中国の電機・精密向けの受注が、スマートフォンの出荷減速で急減した。さらに米中貿易摩擦の余波が広がり、国内や欧米向けの自動車、一般機械向けも打撃を受けた。
足元で月間受注額が800億~900億円で推移する。それだけに年間1兆2000億円の目標は、同業界の需要回復への期待感が込められる。次世代通信規格「5G」関連での投資の立ち上がり、米中摩擦が緩和することで企業の投資意欲が上向くシナリオを想定している。
ファナックの稲葉善治会長は「受注見通しは控えめな印象だ。中国の高速鉄道などインフラ関係は堅調で、全体では自動車も投資サイクルの波が来て回復が期待できる」と述べた。
「そもそも設備の過剰感があり、過去最高を記録した18年(1兆8157億円)のような好況はしばらく難しい」(工作機械大手幹部)との慎重な見方もある。各社ともハード単体売りからの脱却を急いでおり、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や省人化の提案を積極化することで、新たな需要を生めるかがカギになりそうだ。(福本裕貴)