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2021年開幕 ラグビー「新リーグ」のあるべき姿は

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昨年のワールドカップ(W杯)日本大会で盛り上がったラグビー界。次のステップとして議論されてきたのが「プロ化構想」である。社会人のトップリーグ(TL)を改革する計画で、2021年に新リーグをつくる方針までは決まったが、中身は議論が続いている。どんな新リーグにすべきなのか。他競技のプロ化などと比較して論点を整理してみた。

新リーグ設立の意義とは

TLが現在の形のまま維持できると考える人は、ラグビー界にほとんどいないのでは? 理由は企業の負担が重すぎること。チームを持つ各企業は年間15億円程度とされる費用を出している。選手の多さから、他競技の実業団と比べてもかなり高い。逆に、入場料などチームの収入はほぼゼロ。ラグビーの支援を福利厚生と位置づける企業が、そもそも収入をほしがらない事情もある。

一方、自国開催のW杯が終わった今、企業がラグビーを支える「大義」は小さくなっている。W杯前の段階では、複数のチームが強化縮小を検討していた。チーム数や予算が減ればTLのレベルも下がり、日本代表の強化やファン獲得にも痛手となる。

ラグビー界にはもう一つの逆風もある。近年の代表強化の土台となったのが、南半球最高峰リーグのスーパーラグビー。しかし、今季を最後に日本チームは除外されることになっている。

「このままでは先細りになる。協会の理事全員が危機感を抱いている」。日本ラグビー協会の岩渕健輔専務理事が強調する背景にはこうした事情がある。W杯をピークにラグビー界が地盤沈下しないためにはTLの形を変え、企業にとっても魅力的なリーグにする必要がある。

新リーグ設立の旗振り役となったのは日本協会の清宮克幸副会長だった。W杯前の昨夏、「W杯が終わって何も残らないのではよくない。プロリーグをつくってこれまでにない市場を開拓したい」と宣言。協会内の特別チームで議論を始めた。

しかし、TLの参加企業や協会内からプロ化そのものや議論の進め方に反発が強まったため、協会は11月に「新プロリーグ設立準備委員会」を設置。体制を変えて議論を続けてきた。同委員会は先月、新リーグを21年に設ける方針を決定。リーグの構造は岩渕専務理事を中心とする約10人の小委員会で議論しており、1月にも決める予定だ。

「何をもってプロ化なのかというところも議論してきた」と岩渕専務理事は話す。確かに、スポーツのプロリーグの一般的な定義はない。ただ、国内の他競技のプロ化には共通するゴールがあった。それは「各チームが企業の福利厚生ではなく、スポーツで稼ぐための組織に変わること」である。

プロ化を巡る議論と問題点

現在は企業の運動部にすぎない各チームを分社化するなどして独立性の高い組織に転換。その存在意義にスポーツ興行を据える。各クラブが集客やファンサービスの知見や専門的な人材を集め、必死になってチケットを売ろうとすれば、その努力や知恵が新たなファンを生み出していく。ラグビー界の恩恵は大きい。

しかし、新リーグは現在のところ、「プロリーグ」にはならない見通しとなっている。

12月18日、日本協会の理事会だった。「これまでの新リーグの議論の進め方に問題があり、信用できない」。TLの有力チームの幹部が出席し、他の2チームと共同の形で声明を読み上げた。

この四半世紀の日本のスポーツ界を振り返れば、おなじみの光景でもある。次の言葉はどの競技のものか分かるだろうか。

「企業中心の部活のようなあり方は限界に来ている。チーム自体が事業者となり、地域を巻き込むことを目指していく。これまでは言うだけにとどまってきたかもしれないが、これからは違う」

JリーグやBリーグの設立を華々しく告げる宣言ではない。16年、バレーボールのVリーグ機構の嶋岡健治会長が、新リーグ設立の決意を述べたものだった。4カ月後、企業チームの反対を受けて構想は頓挫した。バレーとバスケットボールだけでも、"プロ化"の方針を発表しながら企業の反対などで頓挫したことが3度ずつある。

今回も企業が拒否感を示す理由はいくつかある。まずは、費用が膨らむ懸念。JリーグやBリーグではプロ化の後、親会社が負担するお金が逆に増えたケースが多いとされる。「優勝や下部リーグへの降格を回避するため、選手人件費を増やす方向に進みやすい」。プロリーグを持つある競技団体の幹部は指摘する。

現場の抵抗もある。現在、豊富な資金力で結果を出しているチームは、プロ化によって予算を自由に使えなくなり、他チームに後れを取る可能性がある。チームの分社化などの手続きも、取締役会を通すなど社内的な合意形成が必要になってくる。

もちろん、企業が悪者というわけではない。もともとスポーツ団体とは存在意義が異なる。競技団体が本気でプロ化を目指すなら、その差を埋めるための硬軟織り交ぜた工夫が問われる。

バスケが"4度目の正直"でプロ化に成功し、Bリーグ創設にこぎつけたのには別の力学が働いていた。国際バスケットボール連盟が日本代表の試合を禁止したうえでプロリーグ設立を要求。代表を人質に取られた形の企業も受け入れた。「外圧がなければBリーグは難しかった。ラグビーも国際統括団体などとうまく連携した方がいい」。Bリーグ創設に関わった関係者は助言する。

企業の反対以外にも、プロ化の障害はある。サッカーと競合するホームスタジアムの確保。選手数が多い一方で試合数が少なく、もともと黒字化しにくいというラグビー特有の事情などである。

ビジネスとしての新リーグ

現在、日本協会の委員会で新リーグの骨格を決める議論が進んでいる。競技レベルを上げて接戦を増やすため、1部リーグのチーム数は現行の16から大幅に減らす方向だ。ただ、根本的に重要になってくるのが、ビジネスとしてのリーグの仕組みである。

ある協会幹部は「チームをコストセンターからプロフィット(利益)センターに変えることが大事」と強調する。チームを分社化しなくても、福利厚生部門から収益を目的とした事業部門に変えれば、「ラグビーで稼ぐ組織」にできるという論理だ。確かに、企業にとっては分社化より手間はかからない。

一方、あるチームの幹部は「企業本体の事業になれば、費用対効果をより明確に株主に説明する説明が出てくる。分社化よりハードルが高いのでは」とも指摘する。

分社化と事業部制。どちらを選んでも「ラグビーで稼ぐ組織」に変わるため、実効性や拘束力をどう持たせられるかが重要。そのためには、リーグへの参加要件などをどう設定するかがカギになる。

リーグの構造の中には、第一歩を誤ると、軌道修正が難しいものもある。

その一つが、クラブ間の戦力を均衡させる仕組み。最初から勝敗が見えている試合ばかりでは、観客は増えにくい。特に、ラグビーは力量に差があるとスコアが大きく開く。

有効な対策が、各チームの選手の総年俸に上限を設けるサラリーキャップである。米国ではおなじみだが、現在の日本のプロリーグでは採用されていない。「ラグビーは特にサラリーキャップを入れるべきだ。親企業の金銭負担の増大に歯止めをかける効果もある」。プロリーグを持つある競技団体の幹部は助言する。

もう一つはリーグの根本的な仕組み。スポーツのリーグには、下部リーグとの入れ替えを認める開放型と、認めない閉鎖型がある。プロ野球は閉鎖型、Jリーグ、Bリーグは開放型を採る。

開放型は中小のクラブを全国に増やしやすい一方、リーグ全体の収入拡大という面ではデメリットが多い。降格を恐れるクラブは短絡的な選手補強に走り、ファンサービスやビジネスに投資しにくくなる。クラブの先行きが不透明なため、外部の企業が大型の出資をためらう弊害もある。閉鎖型だと、リーグから漏れたチームの不満は出るだろうが、チーム数を拡大すれば、新規参入を受け入れることは可能だ。

いったんリーグが誕生した後、2つの型を変更した例は世界にもほとんどない。構造転換で不利益を被るクラブの同意が得られないからだ。どちらがラグビー界にあっているのか、正しい道を選ぶ必要がある。

新リーグの骨格は1月中にも決まる。過去のバレー、バスケのように企業を説得できる目算がないまま強気の改革案を打ち上げても、空証文に終わる可能性が高い。一方で、声の大きい企業の顔色だけを見ていては何も変わらない。

そして、何かを変えるなら今が絶好機なのは間違いない。W杯でラグビーへの関心は国内外でかつてないほど高まっている。

W杯のテレビ視聴率は昨年の全番組の中でトップ。若年層からの関心が急速に高まったという、近年のスポーツ界では珍しい特長も見られた。海外のラグビー協会、リーグとの連携などの国際戦略を取りやすいタイミングにもなっている。今の盛り上がりを未来につなげる新リーグになってもらいたい。

(谷口誠)

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