イノフィス、35億円調達 作業支援スーツの販売強化
東京理科大発ベンチャーのイノフィス(東京・新宿)はハイレックスコーポレーションやフィディリティ・インターナショナル、ブラザー工業、フューチャーベンチャーキャピタル、ナック、TIS、東和薬品、トーカイ、ビックカメラなどを引受先とする第三者割当増資で35億3000万円を調達した。ハイレックスコーポレーションとトーカイとは業務提携し、事業拡大につなげる。
今回の調達は新規株式公開(IPO)を目指す事業拡大期の「シリーズC」にあたる。これで累計調達額は約50億円となった。
イノフィスは重い物を持ち上げたり中腰の姿勢で作業したりする動作を空気圧稼働の人工筋肉で助ける作業支援スーツを開発販売している。2019年11月に発売した「マッスルスーツEvery(エブリィ)」の価格は約15万円。
同社によれば同様の作業支援スーツの価格は100万円を超えることもあるという。イノフィスは駆動を空気圧だけに限り、センサーなどの電子部品を使わないことで価格を安くした。
折原大吾最高財務責任者(CFO)は「個人でも買える低価格モデルの発売を契機に、製品を一般に普及させたい。調達した資金は主にマーケティング費用にする」と話している。
「マッスルスーツ」はこれまでにシリーズ累計で5000台以上を販売している。中腰での作業が多い介護や農業、物流の分野での活用が多いという。今後は高齢化で介護需要の増加が予測されるアジアや、人件費が高く労働者保護の意識が高い欧州などを中心に海外展開にも力を入れる。
さらなる研究、開発も進める。現在は腰を補助する製品を中心に展開しているが、他の部分を補助するものにもラインアップを広げる方針だ。補助する力が弱い一方で、軽くて扱いやすい製品の開発も検討する。
(山田彩未)