今年の10大リスク、首位は米大統領選 米調査会社
【ニューヨーク=高橋そら】政治リスクの調査会社ユーラシア・グループは6日、2020年の世界の「10大リスク」を発表した。首位に「誰が米国を統治するか」を挙げた。11月の米大統領選は、多くの人が不当で不確実なものだとみなす結果になると指摘。外交政策はより不安定になると予測した。同社が米国の国内政治を最大のリスクに挙げるのは初めて。
国際政治学者のイアン・ブレマー氏が率いる同社は年頭にその年の政治や経済に大きな影響を与えそうな事象を予測している。19年の首位は「悪い種(Bad seeds)」という表現で欧米政治の混乱や主要国の同盟の弱体化に言及した。実際にトランプ氏は米議会下院でウクライナ疑惑を巡り弾劾訴追を受けるなど、混乱が深まっている。
20年も引き続き米国の動向に注目が集まる。ブレマー氏は「これまで米国内政治を最大のリスクに挙げたことはなかった。今年、米国は前例のない形で試されることになる」と述べた。
米下院本会議は19年12月、トランプ氏を弾劾訴追したが、与党・共和党が過半数を占める上院での弾劾裁判で罷免が決まる可能性は低い。それでも、大統領の正当性に疑問符が付く中で選挙が実施されれば、有権者の信頼低下は避けられない。ブレマー氏は、弾劾訴追が政治的な抑止力を持たなくなれば「トランプ氏は(米国の)選挙結果にも干渉する権限があると感じるだろう」と指摘した。
次いで米中関係もリスクに挙げた。両国は今月15日に貿易協議の「第1段階の合意」の署名式を開く見通しだが、産業補助金など両国間で溝が深い問題は先送りとなり、対立は長期化が避けられない。米中の「デカップリング(分断)」の影響は「世界のテクノロジー分野だけではなく、メディアから学術まで多くの業界や機関に及ぶ」と述べた。
中東の緊張は高まると予想した。イランも米国も全面戦争を望んでいないとしたうえで「イラク内部で致命的な小競り合い」が起きる可能性を指摘した。相次ぐ大規模な自然災害も引き続きリスクだ。各国政府や投資家、企業などの間では気候変動への迅速な対応が求められている。
ブレマー氏はリポートで「20年は国際政治の転換点になるだろう」と語った。過去数十年にわたりグローバリゼーションは世界の貧困を減らし、平和を支えてきたと指摘。現在は米中対立や先進国の分断が進み「世界的な危機を生み出す可能性が高まっている」という。
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