日の丸引っ張る次期エース バレー・石井優希(上)
勝負の年が明けたスポーツ界の中でも、女子バレーボールの東京五輪シフトは際立っている。昨季は4月中旬まで行われていたVリーグが今季は1月末で終了。シーズンを大幅に短縮したのは、その後の日本代表の長期合宿などに時間をたっぷり割くためだ。
監督の中田久美のもと、2大会ぶりのメダルを目指す代表チーム。絶対的なエースだった木村沙織がリオデジャネイロ大会後に現役を退いて以来、石井優希(久光製薬)は常に後継者の最有力候補に名を連ねる。
昨秋に日本で開催されたワールドカップでは全11試合のうち10試合に先発。170得点はチームトップで、全体でも6位の成績を残した。身長180センチのアウトサイドヒッター。同ポジションの古賀紗理那(NEC)が不調、黒後愛(東レ)が故障明けの中、欠かせない存在であることを改めて示したが、チームが目標の3位以内を逃したこともあり、本人が目指す場所はさらに高い。
「この1年で結果を残したけど、それだけでエースというのは違う。どのプレーでも一番といわれるオールラウンダーになりたい」
女子も2メートル近い長身選手が当たり前の世界。パワーや高さで劣る分、精緻な技術で対抗してきた。
主にレフトから放つスパイクはクロス、ストレートと打ち分け、瞬時の判断で相手ブロックの指先の第1関節に当ててワンタッチを狙うこともある。「一本で決めるより、難しいと思ったらリバウンドを取ってラリーに持っていけばいい。(スパイク決定率などの)数字が全てじゃない」。そのスタイルは、粘りのバレーで世界と競り合いたい日本の戦術ともマッチする。
2010年に高卒で久光製薬に入団。以来、9シーズンで優勝5回の強豪に身を置き、攻守のレベルを上げてきた。相手スパイクに対するレシーブの反応は抜群で、苦手なサーブレシーブも大きく改善。2季前のVリーグではMVPに加え、レシーブ賞を獲得した。
主力としての自覚を強めたのは初出場したリオ五輪だった。直前に肉離れを起こしたこともあり「納得いくプレーが出せたのは終盤になってから。それでは遅かった」。ストレート負けで4強入りを逃した米国戦の直後に「自分が引っ張るつもりで次の東京まで頑張りたい」と宣言。自らに奮起を促し、この3年余を走り続けてきた。
今季初めて久光製薬のキャプテンを引き受けたのも「リスクを背負ってやる価値がある」と感じたから。ただ、短いVリーグのシーズンを戦い抜く上で、それは想像以上に厳しい挑戦だった。=敬称略
(鱸正人)