プロ野球選手のオフ 「勤勉」ばかりが能じゃない
ストーブリーグや契約更改も一巡し、球界はオフのまっただ中だ。この時期、プロ野球選手はどのように過ごしているのか。最近は多くの選手が結構練習している。
12月から翌年1月、選手はチームの管轄外にあるが、年末年始の1週間程度を除けば球団施設を使える。ぶらっと行けば誰かしらいるので、練習相手には困らない。最近の選手はオフでも本当に真面目に練習する。自主的に体を動かし、ほとんど休まない子もいる。
練習熱心は悪いことではない。だが僕は全く逆の考えでオフを過ごしていた。シーズンの疲れを取り、心身ともにリセットするのがオフの優先事項だ。星野仙一監督に強制的に練習させられていた若手時代は別として、自分で決められるようになると12月は野球から離れて過ごした。
たくさん寝て、起きたいときに起き、食べたいときに食べる。本能の赴くまま、ストレスフリーの毎日。人と会ってゴルフをし、海外旅行にもよく行った。家族サービスもしたし、妻からは「シーズン中と顔つきが全く変わる」と言われた。
■休むだけ休めば野球への熱意再び
よく「休むと取り戻すのに何倍もかかる」といわれるが、基本がしっかりしていればそんなことはない。むしろ休むだけ休んで新年を迎えると、また野球をしたいという熱意が沸々と湧いてくる。そうなると自主トレ開始だ。足腰と肩をつくり、しっかりバットを振り込んで2月のキャンプインを迎える。
オフに限らず、メリハリは大切だ。野球選手は試合にベストの状態で臨むのが仕事。疲れが残るほど練習し、自己満足していたのでは本末転倒だ。シーズン中の打撃練習では気持ちが乗って、いくらでも打ちたくなることがある。だがここも自制が肝心。腹八分目でやめておいた方が長丁場では安定した結果を出しやすい。
こういう話は後輩にもよくしたが、それでも練習しないと不安でたまらず、使命感に駆られて朝から晩まで球場で過ごすタイプがいる。残業代が出るわけでもないのに。だがそういう選手に限って練習のテーマがはっきりせず、質もイマイチだったりする。
もしかすると今年引退したイチローのような特別な選手は四六時中野球のことを考えて30年近い現役生活を過ごしたのかもしれない。でも人にはそれぞれの性格がある。「勤勉」でない僕はイチローにはなれないし、なりたいと思ったこともない。だが彼のような大記録はつくれなくても、同じぐらい長いキャリアを送れた。メリハリと腹八分目のおかげだと思っている。
(野球評論家)