相鉄、22年度に東急と直通 新幹線駅の新横浜へ一本で
鉄道 地域と走る(下)
相模鉄道がJR東日本に続き、2022年度下期に相互直通運転を始めるのが東急東横線・目黒線だ。「(JR直通線に比べて)きめ細かな路線網という点では東急直通線だ」。東急が東京地下鉄(東京メトロ)に乗り入れていることを踏まえ、相鉄ホールディングスの山田浩央・経営戦略室部長は東急との直通の意義を強調する。
東急日吉駅と相鉄羽沢横浜国大駅間に線路を新設し、相鉄と東急がつながる。東急との直通線は1時間に最大14本程度で、JR直通線の3倍以上。相鉄にとってはJR以上に乗客増が期待できる直通路線となる。
東急との直通の目玉の一つが新幹線停車駅のJR新横浜駅(横浜市港北区)に隣接する新駅ができることだ。相鉄本線からは乗り換えなしで新横浜へ行けるようになる。所要時間は大幅に短縮し、例えば大和駅(神奈川県大和市)から新横浜までは従来の半分以下の19分になる。
「最寄り駅から新幹線の駅まで5分になる。企業連携も盛んにしたい」と意気込むのは新駅・羽沢横浜国大駅に近い横浜国立大の長谷部勇一学長だ。これまでは徒歩15分圏内に駅がなく、横浜駅でバスに乗り換えて通学する学生も多かった。大学名が駅名に付き「大学の場所がわかりやすくなる」とも期待する。
新横浜はみなとみらいを補完するエリアとして企業集積が進む。都心に比べて賃料が安いことや、他都市や都内にもアクセスが良いことが強みだ。横浜市も新横浜への本社移転や研究所の立地に補助金や法人市民税軽減の優遇措置を設けている。
帝国データバンク横浜支店によると、18年に新横浜エリアに本社を移転した企業は13社で、14年以降、毎年10社以上が移転している。9月にもイタリアの高級二輪メーカー、ドゥカティの日本法人が都内から新横浜に拠点を移した。
独清掃機器大手の日本法人、ケルヒャージャパンは17年に宮城県から新横浜に本社を移した。「羽田空港にも出やすく、全国に行ける。立地条件がベスト」(マーケティング部)だという。東急にとっても初の新幹線乗換駅で、都内から新横浜へ向かう乗客増が期待できる。
相鉄は東急との直通効果で沿線の人口増を目指す。「『東急沿線の不動産は高い』と思ったとき、直通先の相鉄に目を向けてくれれば」(相鉄)。新幹線駅に一本で行ける利便性を武器に、会社員など家族連れの流入を期待する。相鉄沿線のタクシー運転手が「よく『新横浜まで』という客がいたけど、直通するとなくなっちゃうね」と話すほど新幹線駅へのニーズは多い。
相鉄沿線住民にとっては利便性が高まる東急との直通運転だが、新横浜駅周辺で働く40代女性は「新横浜から都心に向かって東急がつながることにしか興味がない」。東急の先の相鉄沿線にいかに目を向けてもらうか。東急との直通まであと3年。官民と連携した魅力ある沿線づくりが直通効果増大には欠かせない。
(浦崎唯美子が担当しました)