トヨタ系ソフト会社、都内新オフィス稼働 人材確保へ
トヨタ自動車系の自動運転ソフトウエア開発会社、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)は17日、東京・日本橋に設けた新オフィスが全面稼働したと発表した。自動運転などの「CASE」の進展で開発を担う人材の争奪戦は激化している。愛知県に本拠を置くトヨタなどは働きやすいオフィスを東京に設けることで開発効率向上や人材確保につなげる。
TRI-ADの新オフィスは日本橋の日銀本店近くの「日本橋室町三井タワー」内に入った。16~20階を使い面積は2万1500平方メートル。最大で1200人が働けるといい、採用増で数年内に1000人規模まで拡大する方針だ。
オフィス内にはフロアをぐるりと一周するように設けた道路を模した通路が設けられ、従業員が立ち乗りの電気自動車(EV)に乗って移動できる。オフィスには外光を取り込み、会議室のあるフロアはのれんなどを使って日本橋の町並みをイメージさせる通路をしつらえるなど先進的なデザインが売りだ。従業員や外部からの顧客などが使えるカフェ風のレストランも置いた。
働き方ではシリコンバレー流を取り入れた。プロジェクトを短く区切り、少人数チームで開発とテストを反復する「スクラム」式の開発手法を導入した。「Dojo(ドージョー)」と名付けた技術者対象の講習も定期的に催す。最先端の開発内容から初心者向けまであり、技術者のレベルに合わせ選べるのが特徴だ。
TRI-ADの正社員は現時点で約450人。トヨタなどからの出向者が360人前後おり約90人が新規採用だ。このうち半分以上が外国人で、米アマゾン・ドット・コムやグーグルといった「GAFA」などからの転職者もいる。世界で通用する技術者を獲得するため報酬体系をトヨタ本体とは別枠にし、競争力のある水準を提示できるようにした。
同日、オフィスの全面稼働を発表し、自身も米グーグルから移籍したジェームス・カフナー最高経営責任者(CEO)は「最も安全な車を造るのが使命。トップ人材を日本橋に集めてやっていきたい」と述べた。さらにトヨタお家芸のトヨタ生産方式を「ソフトウエア開発でも実現していく」(同)とした。報酬だけでなく、企業理念やオフィスでの働きやすさも訴えていることで人材確保につなげたい考えだ。
トヨタは2020年、高速道路で車線を自動変更する技術を盛り込んだ車を発売する。鯉渕健最高技術責任者(CTO)は「20年目標は変えていない。MaaS(移動サービス)関連でも同年に東京・お台場でスマホで車を呼び出せるようなデモンストレーションを考えている」と述べた。
TRI-ADはトヨタ、デンソー、アイシン精機が出資して2018年に東京で設立した。トヨタが米シリコンバレーに設けた人工知能(AI)の研究子会社の技術を、車両に実際に搭載できるようにする仕事を担う。