卓球女子の石川、敗戦も五輪切符 最終盤で迷い断つ
【鄭州(中国)=鱸正人】卓球のワールドツアー上位選手で争うグランドファイナルは12日、中国の鄭州で開幕し、シングルスの女子1回戦で東京五輪シングルス代表の残り1枠を争う石川佳純(全農)と平野美宇(日本生命)はいずれも敗れ、世界ランキングのポイントでリードする石川が代表入りを確実にした。
石川は今年の世界選手権覇者の劉詩●(あめかんむりに文)(中国)に0-4で、平野は世界ランキング18位の王芸迪(中国)に1-4で敗れた。
今年の世界選手権を制した劉にはこれまで11戦全敗。「泣いても笑っても最後。後悔のないように攻めきろう」と臨んだ石川だったが、サーブレシーブに苦しみ、要所であと1本が入らない。
3ゲームを続けて落とし、第4ゲームも7-2から逆転負け。「やっと終わったのと、力不足と……」。試合後に涙を流しながら、様々な思いが去来したに違いない。
「勝てればよかったが、自分のやることは終わった」と話した後、2枠目を争う平野も敗れたことで五輪シングルス代表が確実に。過去2回、五輪シングルス代表を勝ち取った26歳にも、東京への道のりの険しさは想像以上だった。
五輪までの最初の2年で世界ランキングを上げ、上位シードで勝負の年に挑む――。そんな長期計画のもと今年1月の世界ランクは日本勢トップの3位。ただ、中国がここ数年で多くの選手を国際大会に派遣したことで計算が大きく狂った。
ドライブ主体の正攻法スタイル。パワーで上回る中国勢には分が悪く、今や世界2位となった19歳の孫穎莎に半年で4度敗れるなどポイントを伸ばせない。「強い選手はミスしないのにミス待ちになったり、簡単なミスにこだわったり」。打開策がなく3番手からはい上がれなかった。
見かねた周囲から気持ちの切り替えを促されたのは10月ごろ。「『思い切って。リラックス』と言われたのは20年の卓球人生で初めて」。以前は聞き流していた両親やコーチの言葉がようやくストンと落ち、迷いも吹っ切れたという。
復調の手応えをつかみ「今年一番調子が良かった」という状態で臨んだ今月上旬のカナダでの国際大会。積極的な攻めで中国選手2人を破り、決勝では鬼気迫るプレーで平野を下した。最後の最後に積み上げた貯金でついに逆転。第一人者の面目躍如を果たした。
「今までで一番ハードだった」という選考レースは確かな血肉となったはず。「さらにレベルアップして五輪で最高のプレーを見せたい」。この経験は8カ月後、3度目の大舞台で必ず生きるに違いない。