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預金はいらない? 銀行口座で手数料を取るワケ

グロービス経営大学院教授が「ABC」で解説

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三菱UFJ銀行が不稼働口座に手数料をかける検討に入ったとのニュースがありました。銀行は個人などから預金を集め、企業に預金金利よりも高い金利を付けて融資してきました。預金口座の管理にはシステム費や人件費がかかりますが、これまでは安定した収益を稼げました。ただ、企業の資金需要低迷などで預金サービスの収益性は低下しています。預金の採算性について、どのように検証したらよいのでしょうか。グロービス経営大学院の斎藤忠久教授が、ビジネススクールで学ぶフレームワーク「ABC(活動基準原価計算)」の観点から考察します。

【解説ポイント】
・厳しい金融機関の収益環境
・受益者負担の原則に基づいた対応必要

「どんぶり勘定」に限界

戦後の高度成長期を通じ、大手銀行は恒常的なオーバーローン(融資需要が預金残高を大幅に上回る)状態にありました。預金を集めれば集めるほど貸し出しが増やせることから、大手銀行は人口集中地域に店舗網を張り巡らせ、いかに居住世帯から預金を集めるかにしのぎを削るようになりました。

しかし、バブルが崩壊し日本経済が低成長に入ると、銀行を取り巻く事業環境は一変。企業の資金需要は低迷し、日銀のゼロ金利政策も相まって貸付金利収入が少なくなっていく一方で、預金獲得の費用が増えました。もうかっている時期は、預金の収益管理は悪くいえば「どんぶり勘定」でもよかったものの、もうからなくなってくるとそうはいきません。預金による収益とコストを詳細に分析・集計することが避けられなくなったのです。

そんなときに威力を発揮するのが、「ABC:Activity-Based Costing(活動基準原価計算)」と呼ばれる会計上の手法です。全ての活動はコストを生むので、その原因となった活動にコストを適正に配賦することで活動ごとの正確な損益を把握できるという「受益者負担の原則」に基づいた手法です。それでは、「預金」の損益をどう分析するのでしょうか。

預金のコストとは

まずは預金獲得の原動力である銀行の支店です。支店の維持にはコストがかかります。一方で、支店は預金の入り払い、貸付金の実行・回収、外国為替での業務等々の幅広い業務を担います。支店で発生したすべてのコストを、発生させた原因(預金業務、貸付業務、外国為替業務等々)に沿って分解したうえで、業務とコストの因果関係をもとに、コストを預金業務を含めた各業務に配賦します。

支店以外でも預金業務に係るその他の部門や業務(口座管理に係るコンピューターシステム等々)、直接的には関係しない銀行本部の管理部門経費も、そのコストの発生原因に応じて預金業務に配賦していきます。また、預金の一部を日銀に当座預金として預託する必要がありますが、ゼロ金利政策で、預金を日銀に預託しても、利息をもらえるどころか最近では反対にマイナス金利として手数料を徴収されることが多くなってきました。これらの預金業務でのコストを預金者に直接支払う預金利息とともに合計していくことで、預金業務の総コストを集計します。

ビジネススキルをもっと学びたい

預金の収益とは

預金業務での収益は何でしょう。預金を原資とした貸付金から上がる金利収入、余裕資金の運用益等々が対象です。この預金での総収益から総コストを差し引いた残りが、預金業務のもうけとなります。ある信金では、1口座当たり概算で年間2000円ほどはコストがかかるとされています。

どこまで正確に活動基準原価計算をしたかは分かりませんが、何らかの口座の維持に必要なコスト分析をした結果といえるでしょう。

さらに、預金口座ごとにこの収益とコストを分解していけば、どのような口座が損失を生んでいるのかが一目瞭然となります。損失を生んでいる口座は閉鎖するか、適切な手数料を徴収することになります。一方で利益を生んでいる口座については、そのような口座の数を増加させる、もしくは1口座当たりの利益を更に増加させるような対策をとれば、銀行全体の損益は大きく改善していきます。

手数料導入の背景

前述のように、日本経済が低成長に移行すると同時に、日銀によるゼロ金利政策の導入もあり、貸付金需要は低迷。預金がもたらす収益が急速に低下しました。そのうえ、レガシーとなった広範な支店網、マネーロンダリングやサイバーセキュリティー対策等のためのシステム費や人件費も増えていき、大手銀行もコスト負担に耐え切れなくなってきたことが、今回の不稼働口座に対する手数料導入の背景です。

また、「民間公益活動を促進するための休眠預金に係る資金の活用に関する法律(休眠預金活用法)」が施行され、一定の条件のもと、休眠口座は預金保険機構に移管されることとなりました。以前は最終取引以降10年間が経過して預金者と連絡が取れない預金などについては失効扱いとし、銀行の収益に組み込まれていました。この法律の導入も手数料導入を後押ししているものと考えられます。

りそな銀行や埼玉りそな銀行ではすでに、入出金などが2年以上なく、残高が1万円未満の口座を対象に年1200円の管理手数料を徴収しています。家計の消費支出に占める金融機関向け手数料の割合は、米国が0.23%、英国は1.20%なのに対して、日本は0.01%にとどまります。日本の銀行は消費者に対し金融サービスを提供しながら十分な対価を徴収していなかったことがうかがえます。

今後ますます預金を取り巻く収益環境が厳しくなっていくことから、銀行は新規開設口座のみならず、既存の預金口座に対する手数料の導入を含めた抜本的な対策を実施するなど、コストに見合った手数料体系の導入を余儀なくされるでしょう。日本では「サービスは無償である」という概念が依然として根強いですが、サービスを含めた便益には本来コストが伴うものです。受益者負担の原則に基づき、適切なコストを負担する必要があることに理解を示していく必要がありそうです。

さいとう・ただひさ
グロービス経営大学院教授。銀行からコンサルティングファームに出向、マーケティングおよび戦略コンサルティングに従事。その後、音響機器メーカーの取締役CFOそして米国持ち株子会社の副社長兼CFO、米国通信系ベンチャーの日本法人代表取締役社長、エンターテインメント系ベンチャーの専務取締役、東証1部上場モバイル向けコンテンツ配信企業の取締役兼執行役員専務CFOを歴任。

ABC(活動基準原価計算)」についてもっと知りたい方はこちら

https://hodai.globis.co.jp/courses/87ea4eba(「グロービス学び放題」のサイトに飛びます)

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