障害者の社会参画が進まぬ日本 必要なものは?
マセソン美季
10月、アフリカのウガンダから日本に来た友人は、どこに行ってもきれいに舗装された道路や歩道を見て目を輝かせていた。「こんなにスムーズな地面だったら、松葉杖でつまずく心配も減るし、車いすに乗った人も自由にどこにでもいける。障害があっても可能性が広がっていいわね」
同じ時期、2週間東京に滞在したアメリカ人は、違う感想を持っていた。「東京には障害のある人って生活していないの?」。観光地以外にも積極的に足を運び、スーパーで買い物をしたり、銭湯に行ったり、ゴミ拾いのボランティアにも参加したそうだ。どこに行っても人は大勢いるのに、障害があると見える人に出会わなかったのに違和感を抱いたという。
ハードのバリアは少なくなっているのに、そこに障害のある人たちが溶け込めていない。2人のコメントは、日本社会の現状を示唆しているのではないだろうか。
国によって「障害者」の定義は異なるものの、日本では人口の約7%が障害者手帳を持っている。手帳のない人もいるため、実際にはもっと多くの障害者がいる。彼らの社会参画を促すためには、施設や設備の充実だけでなく、そこを利用するすべての人たちの理解やモラルが問われると思うのだが、日本ではどうだろう。
例えばエレベーター。車いすやベビーカー、高齢者、妊婦、子連れの人が優先的に乗れるようにと注意書きがされていることが多いけれど、車いすユーザーの私が優先的に乗せてもらったことは、ほとんどない。また、駐車場で車いす用とマークがついたスペースを、止める権利のない人が平気で利用するケースは減らない。
不正利用に対する罰金制度がないから、現状が変わらないと言った人がいる。でもこうした行為は、ルールや罰金ではなく、正しい知識を浸透させ、人々の意識が変わることで、恥ずべき行為になるはずだ。
Fine(罰金)がなくても、Fineな(洗練された)社会を目指す。お金では買えない豊かさが実感できる国になってほしい。
1973年生まれ。大学1年時に交通事故で車いす生活に。98年長野パラリンピックのアイススレッジ・スピードレースで金メダル3個、銀メダル1個を獲得。カナダのアイススレッジホッケー選手と結婚し、カナダ在住。2016年から日本財団パラリンピックサポートセンター勤務。国際パラリンピック委員会(IPC)教育委員も務める。