中村哲さん、無言の帰国 9日夜にも福岡の自宅へ
アフガニスタン東部で殺害された福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表の医師、中村哲さん(73)の遺体が8日、日本に帰国し、9日朝に遺族とともに空路で福岡空港に到着した。遺体は福岡県警が司法解剖するため、県内の病院に移送した後、同日夜にも自宅に戻る見込み。同会によると、11日に福岡市内で告別式が行われる。
9日午前10時すぎ、中村さんの遺体を乗せた飛行機が福岡空港に到着した。駐機場に移動した後、空港職員ら数人がひつぎを地上に下ろした。
空港の展望デッキには九州在住の多くのアフガニスタン人が集まり、中村さんの肖像画や「守れなくて申し訳ない」などと書いた横断幕を掲げた。同県福津市に住むムヒビ・ムジュタバさん(24)は「中村さんには感謝の気持ちでいっぱい。本当に悲しくて仕方がない」と話した。
福岡空港で記者会見したペシャワール会の村上優会長は「悲しいの一言で、今は圧倒的な喪失感を感じている」と話した。同会の今後の活動については「中村先生が実践してきた事業は全て継続したい」と述べた。
中村さんの遺体は遺族とともに7日にアフガニスタンの首都カブールを出発し、8日夕に成田空港に着いた。同空港のターミナルビル前で妻の尚子さん(66)、長女の秋子さん(39)、鈴木馨祐外務副大臣らがひつぎに花束を手向け、黙とうをささげた。
福岡県警は今後、刑法の国外犯規定に基づき、殺人容疑で捜査。遺体を司法解剖して死因や凶器の分析を進める。
中村さんは4日、ナンガルハル州ジャララバードを車で移動中、武装した男らに銃撃された。ほかにボディーガードや運転手ら5人も死亡した。