琵琶湖の湖岸に社屋、水辺で遊び職場に一体感
はたらく オプテックスグループ
客船をモチーフにしたガラス張りのビルからは、目の前に琵琶湖が見える。足元の芝生や砂浜には多数のカヌーや20人乗りのドラゴンボート(ペーロン)が並ぶ。大津市北部にある湖岸の社屋には、防犯や製造装置のセンサーを開発するオプテックスグループの事業会社3社が本社を置く。フラットな組織づくりに水辺が生かされている。
「まいったな」。新入社員の藤森敦志さんは同期10人のじゃんけんに負けて頭を抱えた。オプテックスは約30年続く「琵琶湖ペーロン大会」の常連チームで、今年のチームリーダーに"抜てき"された。出場者集めは難航したが、先輩社員らに相談すると、アドバイスをくれたり、快く応じてくれたりした。
ペーロン大会は同社が管理する5艇を使い、60チームがタイムを競う。20人のこぎ手が息を合わせるうちに一体感が生まれる。藤森さんは「ペーロンでつながった先輩には仕事でも質問しやすくなった」という。
役職にかかわらず、すべて「さん付け」で呼ぶのが社内ルールだが、新人にはハードルが高かった。藤森さんは大会の日に初めて、相談役に「小林さん」と呼びかけることができた。
同社はM&A(合併・買収)で業容を拡大するのに合わせて、3年前から湖岸で、社員の家族を招いて社内見学とレクリエーションイベントを始めた。5年前にグループ企業に途中入社した中島剛さんは毎年、家族4人で参加している。「同僚たちの家庭での顔を知ることで、職場でも打ち解けた雰囲気で話せるようになった」という。
オプテックスはまず技術開発拠点を湖岸に置き、2004年に本社を移した。霧が出る湖岸は屋外で使うセンサーの実験にうってつけだった。社屋のデザインは10社コンペの末、社員全員の投票で決めた。カヌー体験や環境学習を手掛ける子会社オーパルオプテックスを設立し、社員は無料で利用できるようにした。
創業者の小林徹・取締役相談役は「長い時間を過ごす職場の環境が良ければ、人生は豊かにできる。フラットな組織は自由な発想を生み、開発型企業の付加価値を高める」と話す。
持ち株会社であるオプテックスグループは9日、本社を創業の地の大津市中心部に戻し、中枢部門の20人が移る。事業会社3社の本社と社員330人は現在の湖岸に残る。
(木下修臣)
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